9月代表選という「幸運」 立憲民主党は生かせるのか 人羅格
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野党・立憲民主党にとって、東京都知事選での支援候補の敗北は、自民党の「政治とカネ」問題の陰に隠れていた課題と弱点を改めて突きつけた。
岸田文雄首相(自民党総裁)が交代した場合、次期政権と渡り合う「顔」に誰がふさわしいか。9月代表選をその選択の好機と捉える機運は乏しい。
「無党派、女性、若者」の壁
ある意味、象徴的光景だった。都知事選投票前夜の7月6日夜、JR新宿駅前での蓮舫元参院議員の最終演説はたいへんな盛況だった。埋め尽くす聴衆で高揚感に包まれていた。
対照的に、約2時間前にJR池袋駅前で見た小池百合子都知事の最終演説はまさにカオスだった。折からの雷鳴と雷雨にアンチの「やめろ」、支援者の「ユリコ」コールが重なり、小池氏の声はかき消された。近くで雨宿りしていた人々はぼうぜんとしていた。
ただし、すでに各種調査で蓮舫氏支持の伸び悩みと小池氏の圧勝ムード、石丸伸二・前広島県安芸高田市長の追撃傾向はわかっていた。蓮舫陣営の一人は「この熱気は得票とは別なのですね」と冷めた様子で語っていた。
だからこそ、開票後の辻元清美代表代行の「もう通用せえへんのかな」という感想には正直、拍子抜けした。
石丸氏に得票が及ばなかったこともあり、「蓮舫氏たたき」やこれへの応酬が選挙後も論争となっている。ただし、政党色を出さなかった小池氏と違い、蓮舫氏は立憲民主党と共産党の支援を隠さず戦った。少なくとも立憲は「敗因」に実質責任がある。
確かに衆院3補欠選挙で完勝したまま推移すれば、泉健太代表の下で次期衆院選を戦う公算は大きかっただろう。目下、自民は逆風下にある。ある程度の伸長を見込んでいたはずである。
だが、その一方で「なぜ3年前の衆院選で立憲は伸びず、枝野幸男代表(当時)が辞任に追い込まれたのか」という教訓はあまり顧みられなくなった。
さきの衆院選で立憲が敗北した一番の要因は、自分たちの支持率が低くても、政権与党に逆風が吹いていれば批判票の受け皿になれるという「逆風戦術」の甘さを露呈したためだ。
もうひとつは野党共闘の限界だ。小選挙区の接戦区で与党に肉薄したが、軒並み敗北した。
つまり、立憲自身の支持率や有権者のシンパシーが高くなければ衆院選は勝ち抜けない。その努力を泉氏や岡田克也幹事長らはどれだけ積み重ねてきたのか。
都知事選では世論・出口調査などから「無党派、女性、若者」支持の弱さという、まさに立憲の抱える課題が投影された。ネットでの拡散を原動力に若者や都市無党派層に浸透した石丸氏に対し、立憲はネットでの若者対策が相変わらず立ち遅れている。
政策面の最大の弱点は一貫して「経済」であろう。格差是正や再配分重視という主張の基軸が必ずしも若者たちの心を捉えていない可能性がある。
「環境と成長の調和」というビジョンに説得力がなければ、分配の持続に疑問符がつく。率直に言うと、若者や働き盛り世代…
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週刊エコノミスト
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