反転の糸口つかめぬ岸田自民 無党派層を取り込めぬ泉立憲 及川正也
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「与党も野党も沈没して、この国の政治はどうなるのか。ポピュリズム政治の世になるのか」。7月7日の東京都知事選結果を踏まえた自民党ベテランの感想だ。
勝機ありと踏んで立憲民主党が担ぎ出した元参院議員の蓮舫氏は、小池百合子知事に遠く及ばないばかりか、「石丸旋風」にも吹き飛ばされ、無残な結果に終わった。いつもは強気の辻元清美代表代行が「もう古くなったのかな、もう通用せえへんのかなとか、ちょっと思った」とこぼす弱気なコメントから、その衝撃度が伝わる。
「ステルス支援」に徹した自民党は小池氏の3選に胸をなで下ろす一方で、「2勝6敗」の惨敗に終わった東京都議補選の結果にショックを隠せない。
とりわけ、都連会長を務める萩生田光一前政調会長の地元・八王子市での大差による敗北は、中央政界の「裏金事件の逆風」の影響をもろにかぶった格好だ。
東京の結果が全国的な傾向を表すとは限らない。ソーシャルメディアを駆使して石丸伸二氏が起こした旋風は、若者が多い大都市ならではの現象とも言えるだろう。
ただし、「政治を変える」という現状打破のメッセージは、強い訴求力があったに違いない。既存政党を「失格」とみなす有権者は多いはずだ。
危機感を募らせる自民、立憲両党は、ともに9月に総裁選、代表選を迎える。それぞれ「敗北」を機に「岸田降ろし」「泉降ろし」の声が一段と高まっている。
総裁選の鍵握る麻生氏
自民党では、岸田文雄首相と距離を置く菅義偉前首相が「国民に刷新感を持ってもらえる」ことが重要だと強調し、ニューリーダーへの期待を隠さない。
総裁選政局のカギを握るのが、菅氏と相対するかたちで党の実権を握る麻生太郎副総裁だ。麻生氏は岸田首相や麻生派の河野太郎デジタル相と会合を重ねている。
麻生派関係者によると、政治資金規正法改正を巡り首相との対立はあったものの、基本的には麻生・茂木・岸田の3派による政権運営が好ましいと考えているという。
総裁選では、主流派以外から若手や女性など多くの議員が立候補して党のイメージアップを図り、最後は首相続投に導く、という筋書きでは、という見方もある。
ところが、茂木敏充幹事長が総裁選出馬に向けて動き始めたことで、そのシナリオが揺らぎつつある。茂木氏は菅氏とも接触し、政策をめぐって意見交換した。
都知事選があった7月7日には、茂木派の笹川博義衆院議員が党の再生には「組織のトップのけじめが必要」と述べ、岸田首相に事実上の退陣を要求した。
もう一つの波乱要因が河野氏だ。総裁選への意欲を常に持ち続けるが、菅氏らが派閥を離脱するよう迫っており、所属する派閥の麻生氏と板挟みの状態だという。
河野氏に近い自民党関係者はこう見る。「3年前の総裁選で河野氏に出馬を促したのは当時首相の菅氏で、それを止めようとしたのが麻生氏。心情的には菅氏に近い」
麻生氏は総裁選出馬に意欲を示す石破茂元幹事長を警…
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週刊エコノミスト
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