“もうけが全て”の投資業界に“水滴” 22世紀を見据えた運用哲学 浜田健太郎/稲留正英・編集部
有料記事
『社会をよくする投資入門』 ニューズピックス 1980円
著者 鎌田恭幸さん(鎌倉投信社長)
かまた・やすゆき 1965年生まれ。東京都立大学卒業後、日系・外資系信託銀行で資産運用業に携わり、2008年11月に鎌倉投信を設立して社長に就任。著書に『外資金融では出会えなかった日本でいちばん投資したい会社』。
今年1月に新NISA(少額投資非課税制度)が始まり、日経平均株価が2月に34年ぶりの過去最高値を更新。日本は久しぶりの投資ブームに沸いている。株式を中心に証券投資の手法はさまざまだが、投資の世界には、「もうけることは善であり、収益率は高いほどよい」との価値観が存在することも否定できない。
日系・外資系金融機関で長年運用の世界に身を置いてきた著者は執筆の動機について、「いかに効率的におカネを増やすのかが問われる金融空間で働いてきました。投資には単におカネを増やすだけではなく、社会をよくしていく側面もあります。鎌倉投信は、『いい会社を応援する』という考え方があり、通常とは違う色の“水滴”を落とす本を出そうと考えました」と話す。
鎌倉投信の設立は2008年11月。世界的な株価下落と金融不安が広がった「リーマン・ショック」の直後だ。「投資家の資産形成と社会の持続的な発展の両立」を掲げたものの、「きれいごと」「人の金を使って社会実験をするな」と批判を受けた。だが、著者の信念は逆に強固になる。それに伴い、同社の経営方針に共鳴する投資家が集まるようになる。
「鎌倉投信に口座を開き、投資している顧客は資産運用、投資が初めてという方が5人に1人くらいいます。投資に対して違和感があり、ばくち的な世界ではないかと考えていた人たちが、『投資を通じていい社会を作ることができる』と納得感を持って始められています」
鎌倉投信が「いい会社」と評価する視点は三つある。「社員を大切にしているか」「多くの人とよい関…
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週刊エコノミスト
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