教養・歴史 著者に聞く

みんなが「中年」を語り始めるきっかけになれたらうれしい 北條一浩・編集部

『パーティーが終わって、中年が始まる』

幻冬舎 1540円

著者 phaさん(文筆家)

「ニート」という言葉がメディアを席巻した時期があった。勤労意欲のない若者を指した用語である。そのニートの時代が終わり、気が付けば自分も中年になってしまった諦念と生活のリアルを書いたのが本書だ。

「祭りが終わった感じ、と言えばいいでしょうか。タイトルだけ見るとネガティブなことを書いているように思われるかもしれませんが、重い話がしたいわけではなく、徐々に衰退していく気分、滅びの美学みたいなものが僕は好きなんですね」

 40代半ばになったphaさんが、自身を「デフレの子」と書いているのがまさに象徴的だ。

「日本は1990年代からデフレ、つまりモノの値段が上がらない状態でやってきました。僕もそこにどっぷり漬かって、安価なチェーン店などを歓迎しながら生きてきました。ところが最近はインフレになってきていますね。そして自分は若者とはいえない年齢になっているのに、まだデフレ文化から抜けきれていない。それが実情だと思うんです」

 20~30代のphaさんの活動で特徴的なのがシェアハウスだ。phaさんは誰でも出入りできるシェアハウスを組織・運営し、そこで出自や学歴、業界などの枠組みを超えて個人と個人の自由な交流が生まれた。

「みんなで一丸となってプロジェクトを達成しよう!みたいなのではまったくなくて、お金と無関係に人が集まれて、コミュニケーションが苦手な人でも居られる場所。僕自身、家族という空間がピンとこなかったこともあって、そういうつながりがいいな、と思っていました」

 しかしそのシェアハウスも2019年に解散、1人暮らしが始まる。

「シェアハウスで多くの人と会いましたが、もう少し一人ひとりの友人を大切にしたいと思うようになりました。加齢による心境の変化なのか、整理できていないのですが……」

 中年になるとかつてのように勢いだ…

残り439文字(全文1239文字)

週刊エコノミスト

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