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教養・歴史 書評

京都の“最有力”12社を糸口に古代の政治と社会を論じる 今谷明

 元来、日本人は山岳や岩石などの自然物を崇拝の対象としていた。日光の男体山や富士山などその典型である。大和の大神(おおみわ)神社など、その古態をとどめていて、鳥居はあるが社殿がない神社なのである。しかし古代のある時期に本殿・拝殿などの建物が設けられると、それが崇拝されるようになり、今日に至る。

 島田裕已著『京都の最強神社──12社の謎を読み解く』(祥伝社新書、1034円)は、古代から平安末期にかけて京都で成立した神社のうち最有力の12社を取り上げてその由緒を解説し、ひいては古代の政治と社会の特色を論じた興味深い本である。

 著者が“最強神社”というのは伊勢や出雲の神宮・大社のように『古事記』『日本書紀』に記されている名高い神社をいうが、本書では記・紀以降に成立した神社も多く取り上げ、平安期の政治に神社の成立がどう関わったかを広く論じている。

 京都の古社といえば、賀茂上下社(下鴨・上賀茂)や松尾大社がまず思い浮かべられるが、著者によればこの3社は渡来人の秦氏(はたうじ)が信仰していた神社であるという。したがって当3社は平安京の成立以前にさかのぼる古い神社であることになる。

 平安朝を通じてほぼ権力の中枢にあった藤原氏は、氏神(うじがみ)である奈良の春日大社から勧請(かんじょう)(分霊を迎えること)して京都で吉田・大原野の2社を創立した。しかし吉田社が大きな政治力を発揮したのは、神官・吉田…

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