新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

投資・運用 株式市場が注目!海外企業

バイタル・ファームズ 鶏卵売上高が米国2位 宮川淳子

鶏を「平飼い」するバイタル・ファームズの契約農家 バイタル・ファームズ提供
鶏を「平飼い」するバイタル・ファームズの契約農家 バイタル・ファームズ提供

Vital Farms 年平均35%の増収/124

 バイタル・ファームズは鶏卵の卸売りと消費者へのオンライン販売を本業とする米国企業だ。

 現会長のマシュー・オヘア氏、その妻ら3人が2007年、米南部テキサス州で創業した。米ニュース専門放送局CNBCがウェブサイトに載せた昨年10月4日付インタビュー記事によると、オヘア氏は50代でバイタル・ファームズを創業するまでに約50の事業を興した連続起業家。1998年には、自身が創業した航空会社社員向けの旅行会社が米ナスダック証券取引所に上場した。同社は01年の米同時多発テロで業績が悪化し、他社に身売りしている。

 オヘア氏は新事業を模索する中、「コンシャス・キャピタリズム(思慮深い資本主義)」という考えを知った。米高級食品スーパーマーケットのホール・フーズ・マーケットを創業したジョン・マッキー氏が06年に発表したもので、金もうけより収益性と社会的責任のバランスを追求する経営を指す。

 オヘア氏は鶏卵生産に目を付けた。当時、世界の養鶏農家の大半は鶏をケージ(おり)に閉じ込めて採卵していた。「世界で最もひどく苦しめられている動物だ」と心を痛め、テキサス州に約11ヘクタールの農地を購入し、鶏が屋外を自由に動き回れる「平飼い」の養鶏を始めた。それがバイタル・ファームズだ。

 23年末現在、契約する養鶏農家は300戸超。同社は23年の鶏卵売上高を米国で2位としている。1位は23年6月期の鶏卵売上高が30.2億ドル(約4445億円)に上る米鶏卵最大手カル・メイン・フーズだ。

 バイタル・ファームズが契約する養鶏農家は同社が「パスチャーベルト(牧草帯)」と呼ぶ中西部と南部の一部。夏は暑すぎず、冬は寒すぎず、雨量が多くも少なくもなく、年中平飼いが可能だという。

 創業当初、鶏卵の販売先はテキサス州オースティン周辺の農産物直売所やレストランだったが、1年もしないうちにホール・フーズ・マーケットに納入するようになった。23年現在、ホール・フーズや米小売り大手のスプラウツ・ファーマーズ・マーケットなど自然食品に強いチャンネルが鶏卵売上高の39%を占めている。同年末現在の納入先は約2万4000店に上る。同社は今後の市場開拓先にコンビニエンスストア、米軍施設内小売店、海外市場などを挙げている。動物福祉に配慮した養鶏を求める消費者が増えていることから、平飼い鶏卵の需要は引き続き増加すると見込まれている。

 こうした市場の変化などを背景に、バイタル・ファームズの業績は順調に推移してきた。18~23年の売上高伸び率は年平均35%と高く、粗利益率は同30%を上回った。

残り1239文字(全文2339文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

11月26日号

データセンター、半導体、脱炭素 電力インフラ大投資18 ルポ “データセンター銀座”千葉・印西 「発熱し続ける巨大な箱」林立■中西拓司21 インタビュー 江崎浩 東京大学大学院情報理工学系研究科教授、日本データセンター協会副理事長 データセンターの電源確保「北海道、九州への分散のため地産地消の再エネ [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事