モーディーン・マニュファクチャリング 熱管理の米大手 清水憲人
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Modine Manufacturing データセンター向け冷却システムが伸長/125
モーディーン・マニュファクチャリングは自動車用ラジエーター(放熱器)など熱管理製品の米大手だ。
1916年、大学で機械工学を専攻した20代後半の青年、アーサー・モーディーンが米中西部ウィスコンシン州ラシーンで創業した。最初の製品は農業トラクター用ラジエーター「スパイレックス」。米陸軍が第一次世界大戦中、火砲けん引車に採用した唯一のラジエーターだったという。25年、ラジエーター「ターボチューブ」を米自動車大手フォード・モーターの乗用車「モデルT」向けに供給するようになり、30年にはカーヒーターを市場投入した。
第二次世界大戦中は軍用機用ラジエーター、戦後の50年代にはビニールハウス用暖房や冷房用コンデンサー(蓄電器)も製造するようになった。79年までにトヨタ自動車、日産自動車、ホンダの対米輸出車に取り付けるコンデンサーの主力メーカーに躍り出た。84年、米ナスダック証券取引所に上場し、のちに米ニューヨーク証取に上場市場を変更している。
現在は熱管理関連の各種製品やソリューションを26カ国以上で提供するグローバル企業に成長した。直近5年間の業績は、新型コロナウイルスの影響があった2021年3月期は減収減益だったが、22年3月期以降は増収増益を続けている。24年3月期売上高の地域別構成比は米州56%、欧州35%、アジア9%だった。
事業セグメントは「パフォーマンス・テクノロジーズ」と「気候ソリューションズ」の二つに分かれる。
前者は24年3月期売上高の57%を占め、主に商用車、オフハイウエー車両(農業機械や建設機械など特殊自動車)、発電施設向けのラジエーター▽コンデンサー▽エンジン冷却モジュール──などの製品からなる。近年力を入れているのは電気自動車(EV)やハイブリッド車向け製品。モーター、ギア、インバーターなどを一体化した基幹装置「イーアクスル」や電池を冷却する装置を製造する。
もう一つのセグメント、気候ソリューションズは商業施設、工場、学校、医療機関といった建物の暖房、換気、空調、冷蔵の装置に組み込む製品からなる。近年、伸びているのはデータセンター向け冷却システムだ。
データセンターにはコンピューター、サーバー、ネットーワーク機器が数多く設置されていることから、稼働中に大量の熱が発生する。機器が過熱するとコンピューターの性能が低下し、故障するリスクが高まるため、適切な温度を維持する冷却システムが不可欠だ。
全米商工会議所の17年資料によれば、データセンター運営費の40~80%を…
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週刊エコノミスト
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