国際・政治 株式市場が注目!海外企業

モーディーン・マニュファクチャリング 熱管理の米大手 清水憲人

ニューヨーク証券取引所で取引の初めにベルを鳴らすモーディーンの経営陣ら(2005年10月、Bloomberg)
ニューヨーク証券取引所で取引の初めにベルを鳴らすモーディーンの経営陣ら(2005年10月、Bloomberg)

Modine Manufacturing データセンター向け冷却システムが伸長/125

 モーディーン・マニュファクチャリングは自動車用ラジエーター(放熱器)など熱管理製品の米大手だ。

 1916年、大学で機械工学を専攻した20代後半の青年、アーサー・モーディーンが米中西部ウィスコンシン州ラシーンで創業した。最初の製品は農業トラクター用ラジエーター「スパイレックス」。米陸軍が第一次世界大戦中、火砲けん引車に採用した唯一のラジエーターだったという。25年、ラジエーター「ターボチューブ」を米自動車大手フォード・モーターの乗用車「モデルT」向けに供給するようになり、30年にはカーヒーターを市場投入した。

 第二次世界大戦中は軍用機用ラジエーター、戦後の50年代にはビニールハウス用暖房や冷房用コンデンサー(蓄電器)も製造するようになった。79年までにトヨタ自動車、日産自動車、ホンダの対米輸出車に取り付けるコンデンサーの主力メーカーに躍り出た。84年、米ナスダック証券取引所に上場し、のちに米ニューヨーク証取に上場市場を変更している。

 現在は熱管理関連の各種製品やソリューションを26カ国以上で提供するグローバル企業に成長した。直近5年間の業績は、新型コロナウイルスの影響があった2021年3月期は減収減益だったが、22年3月期以降は増収増益を続けている。24年3月期売上高の地域別構成比は米州56%、欧州35%、アジア9%だった。

 事業セグメントは「パフォーマンス・テクノロジーズ」と「気候ソリューションズ」の二つに分かれる。

 前者は24年3月期売上高の57%を占め、主に商用車、オフハイウエー車両(農業機械や建設機械など特殊自動車)、発電施設向けのラジエーター▽コンデンサー▽エンジン冷却モジュール──などの製品からなる。近年力を入れているのは電気自動車(EV)やハイブリッド車向け製品。モーター、ギア、インバーターなどを一体化した基幹装置「イーアクスル」や電池を冷却する装置を製造する。

 もう一つのセグメント、気候ソリューションズは商業施設、工場、学校、医療機関といった建物の暖房、換気、空調、冷蔵の装置に組み込む製品からなる。近年、伸びているのはデータセンター向け冷却システムだ。

 データセンターにはコンピューター、サーバー、ネットーワーク機器が数多く設置されていることから、稼働中に大量の熱が発生する。機器が過熱するとコンピューターの性能が低下し、故障するリスクが高まるため、適切な温度を維持する冷却システムが不可欠だ。

 全米商工会議所の17年資料によれば、データセンター運営費の40~80%を…

残り1233文字(全文2333文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

9月24日・10月1日合併号

NISAの見直し術14 長期・分散・積み立てが原則 「金融リテラシー」を高めよう■荒木涼子16 強気 「植田ショック」から始まる大相場 日経平均は年末4万5000円へ■武者陵司18 大恐慌も 世界経済はバブルの最終局面へ  実体経済”に投資せよ■澤上篤人20 中長期目線 「金利ある世界」で潮目変化  [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事