メープルベア 米食料品宅配サービス大手 児玉万里子
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Maplebear 利用者は770万人/126
メープルベアは食料品宅配サービス「インスタカート」の運営会社。電子商取引サイトの食料品部門や大手食品スーパーマーケットのオンラインサービスとの競合はあるが、食料品宅配サービスに限った米国市場シェアは2022年、インスタカートが74.3%で首位だった(米市場調査会社イーマーケッター調べ)。同社が「ショッパー」と呼ぶ配達員が小売店で商品を買い、注文したユーザーに宅配するサービスだ。
インドに生まれ、リビアとカナダで育ったアプルバ・メフタ氏ら3人が12年に創業した。メフタ氏はカナダの大学で電気工学を学んだ後、カナダの電子機器メーカーのブラックベリーや米情報技術大手アマゾン・ドット・コムなどを経て、10年に起業家として独立した。
コロナ禍で需要急増
米紙『ロサンゼルス・タイムズ』が17年に載せたインタビュー記事によると、20社を起業したが、失敗続きだった。車を持っていなかったメフタ氏は12年のある日、買い物を代行してくれるサービスには需要があると思いついた。
サービスはたちまち人気となり、とりわけ新型コロナウイルスの感染が急拡大した20年、ショッパーを55万人増強するほど需要が増えた。同社は23年9月、米ナスダック証券取引所に上場している。
利用方法は簡単だ。ユーザーはインスタカートのアプリかウェブサイトで小売店を指定し、そこで売っている商品を選ぶだけだ。メープルベアと契約したショッパーがアプリを使って注文を受け付け、小売店に出向いて商品を購入し、ユーザーの自宅に届ける。
ユーザーにとっては商品代金のほかに配達手数料、サービス料金、ショッパーに支払うチップがかかるため、自分で買うより高くなる。それでも自宅と店の往復や商品を見つける時間の節約になる買い物代行に価値を見いだす人は多い。23年6月中に1回以上利用したユーザー数は約770万人だった。営業エリアは米国とカナダの約1万4000の自治体に上っている。
コストコなどと契約
同社と契約する小売りチェーンは1500以上。米ディスカウントストア大手コストコや米スーパー大手クローガーなどの全国チェーンだけでなく、地場スーパーも含め契約小売店は23年末現在、8万5000店を超す。また、小売店のネット販売や店舗管理のデジタル化も支援する。
商品取扱高は特定の小売業者へ集中している。過去3年間は同社の売上高に占める上位3社の取扱高の比率が43%だった。大手小売業者にとっても存在感は大きい。
20年、新型コロナウイルスの感染が拡大すると、人々は買い物を避けるようになり、商品取扱高は前年比約4…
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週刊エコノミスト
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