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経済・企業 トランプvs.ハリス

トランプ氏再選でもEV推進 ハリス氏ならエネ業界は影響甚大 岩田太郎

トランプ氏支持の背景には、テスラに有利の打算か(同社創業者のイーロン・マスク氏)(Bloomberg)
トランプ氏支持の背景には、テスラに有利の打算か(同社創業者のイーロン・マスク氏)(Bloomberg)

 経済・産業政策でも対照的な両候補。それぞれが当選した場合の産業界への影響を探る。

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 トランプ氏が当選した場合に、産業界の注目が最も集まるテーマの一つが、バイデン政権の目玉政策である電気自動車(EV)の促進策がどのようになるかだろう。

 バイデン大統領はEVでガソリン車を完全に置き換える政策を掲げ、充電ステーションの建設補助金を主な柱とする2021年のインフラ投資法と、EV購入補助金とEVバッテリー工場建設への補助金が主眼である22年のインフレ抑制法(IRA)を成立させた。

 テスラはその恩恵を最大レベルで受けた企業で、売り上げと収益が大いに伸びた。実際、創業者のイーロン・マスク氏は20年の大統領選でバイデン大統領がトランプ氏と対決した際に、バイデン氏に票を投じた。ところが、マスク氏は今回の大統領選でEVへの補助金廃止を訴えるトランプ前大統領への支持を表明して世界を驚かせた。トランプ氏が当選すれば、テスラには損失が生じると懸念されるからだ。

 だが実際には、トランプ再選が逆にテスラに有利に働く可能性が高い。まず、EV推進の根拠法となっているインフラ投資法とインフレ抑制法を改正、あるいは一部廃止するためには共和党がホワイトハウスと上下両院を手中に収め、さらに再エネ発電施設やEVバッテリー工場の立地で雇用や経済効果に浴する南部共和党州選出の議員の反対を抑え込まなければならない。これは、実現が難しい。

補助金廃止はテスラに有利

 さらに、上下院のどちらかを民主党が押さえれば法改正や廃止はさらに困難になり、EV普及推進の仕組みは法律によって惰性的に機能し続ける。

 加えて、トランプ氏はEV全廃を目指しているのではない。「EVはすばらしい」と、従前の否定的な立場を軟化させている。

 そこで、「第2次トランプ政権」は、補助金が出ないはずの外国製EVをリースにすると補助金を受け取れる現行の「抜け道」をふさぎ、テスラのシェアを奪うドイツや韓国などの競合企業を結果的に不利な立場に追い込むと考えられる。さらに、充電ステーションへの補助金給付を困難にすることで、垂直統合的に充電ネットワークを自力展開するテスラのEV販売に有利な状況を作り出す可能性もある。

 共和党への政権交代は、主にテスラのライバル企業に不利となる可能性が高い。マスク氏は合理的な分析と判断でトランプ前大統領を支持していると思われる。実際に、「政商」としてのマスク氏は、トランプ氏再選のために80万人の票を確保すべく、自身が所有するソーシャルメディアのⅩ(旧ツイッター)で大規模な「トランプ推し」を展開中だ。

どちらでもIT業界は安泰

 IT業界を中心とする米財界は、トランプ前大統領とハリス副大統領のどちらが当選しても対応できるよう、「保険」をかけている。

 業界の著名投資家ティール氏は、元ベンチャーキャピタリストで、トランプ候補の副大統領候補になったバンス上院議員を22年の上院選で支援した師弟の間柄だ。米ニュースサイトのビジネスインサイダーは、「バンス氏の政治思想はティール氏に大きく影響されており、トランプ当選となればIT業界が、バンス氏を通して政策立案を左右していく」と予想した。

 また、米国第一主義を掲げるトランプ陣営が重視する製造業の国内回帰は、バイデン政権が産業政策で支援する半導体関連などには、引き続き追い風だ。

 翻って、不透明なのが巨大テック規制の行方だ。トランプ前大統領は一般的に規制撤廃を好むが、副大統領候補のバンス氏はシリコンバレー出身でありながら規制強化に積極的だ。規制緩和の…

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