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経済・企業 自動車

BYDを猛追する「吉利汽車グループ」の実像 湯進

2010年のボルボ買収で研究開発力を引き上げた(写真はZEEKR X、筆者撮影)
2010年のボルボ買収で研究開発力を引き上げた(写真はZEEKR X、筆者撮影)

 欧州メーカー買収や高級EVで海外進出を加速。今やBYDに次ぐ巨大メーカーに成長した。

傘下の高級EVメーカー「ZEEKR」が日本進出へ

 BYDに並ぶ中国の有力自動車メーカーとして、吉利汽車グループ(本社:中国浙江省杭州市)が脚光を浴びている。日本経済新聞は8月、吉利汽車傘下の高級電気自動車(EV)ブランド「ZEEKR(ジーカー)」が2025年に日本市場へ進出すると報じた。ZEEKRは24年5月、過去最速で米上場を果たした中国自動車メーカーとして知られている。

 8月には、吉利汽車グループと吉利子会社のボルボ・カーが17年に設立したスウェーデン高級EVメーカーのポールスターが、米サウスカロライナ州でスポーツタイプ多目的車(SUV)の生産を始めた。これまで中国国内で生産し、各国に輸出していた同ブランドは中国系EVとして初の米国生産を実現した。

 従業員14万人を抱える吉利汽車グループは、主に大衆車ブランド「吉利帝豪」、中高級車ブランド「Lynk&Co」「ZEEKR」「吉利銀河」を展開している一方、独メルセデス・ベンツと合弁で中国生産する「スマート」、スウェーデンのボルボ・カーなど多数のブランドを傘下に収めている。グループ全体の販売台数は23年に279万台。24年1~7月には174万台に達し、上海汽車、BYDに次ぐ中国第3位の自動車グループに躍進した。本稿ではあまり知られていない吉利汽車の実像を明かしていきたい。

スタートは冷蔵庫事業

 中国では政府の方針に基づき、1980年代から国有企業が外資企業との合弁を通じて、乗用車生産を開始した。外資系企業が生産や技術を主導した国産乗用車は高価なため、主に公用車向けとなった一方、政府が合弁事業による自動車産業の発展を重視するあまり、産業の発展をけん引する地場ブランドの育成には至っていなかった。

 90年代末に登場した民営自動車メーカーは、自主開発で乗用車を製造する独立系メーカーであり、吉利汽車はその中の一社だ。

 冷蔵庫製造や二輪車事業からビジネスをスタートした創業者の李書福氏(1963年~)は、「消費者の手の届く乗用車」の生産を意識し、独メルセデス・ベンツの新車の分解から自動車構造を研究しはじめた。97年に四川省のメーカーから自動車生産ライセンスを取得し、吉利汽車制造有限公司を発足した。エンジンや変速機などのコア部品を外資系企業から購入し「寄せ集め型」生産を行うところから自動車生産を開始した。「クルマ作りは養豚と同じくらい簡単だ」との当時の発言からは、李氏が当初ものづくりに安易な姿勢で臨んでいたことがうかがえる。

 この時期、多くの民営メーカーが吉利汽車と同じ発想で低価格車市場に参入した。製品の差別化ができなく、価格競争が激化し、地場メーカー各社の収益力低下が問題となった。そこで李氏は品質重視と外部資源を有効活用したコア部品の内製化に方向転換し、外資系企業を買収する戦略を打ち出した。

 10年にスウェーデンのボルボ・カーを買収し、研究開発力の向上や製品ラインアップの拡充を図った。17年以降は、マレーシアの国民車メーカー「プロトン」、英「ロータス」など海外ブランドを傘下に入れ、独メルセデス・ベンツグループや英「アストン・マーチン」にも出資した。

習近平氏の後押しも

 中国政府が企業に海外での買収に制限をかけているなか、同社がM&A(合併・買収)戦略を続けられる理由は本拠地である浙江省政府から分厚い支援を得ているという見方がある。実際、03年に浙江省トップに着任した習近平氏が吉利汽車を視察し、「民営自動車メーカーを支援すべき…

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週刊エコノミスト

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