スマホ専業「みんなの銀行」の3期連続赤字がふくおかFGに迫る経営決断 高橋克英
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ふくおかフィナンシャルグループ傘下のみんなの銀行は苦境が続く。大胆な戦略の見直しが避けられない。
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総資産32兆円を誇る日本最大の地銀グループ、ふくおかフィナンシャルグループ(FG)傘下のスマートフォン専業「みんなの銀行」。2021年5月に設立され、地銀大手のデジタル銀行進出として注目を集めたが、3期連続の最終赤字と厳しい業績が続いている。
みんなの銀行は全国のデジタルネーティブ世代がターゲット。モノトーンに黄色をアクセントカラーにした斬新なアプリデザインと、直感的な操作性によるスマホ上でのサービスを武器として、当初計画では3年目には120万口座、預金2200億円、消費性ローン800億円を獲得し、単年度黒字化を目指していた。
しかし、足元の口座数は96万口座、ローン残高は118億円にとどまり(24年3月末)、24年3月期は54億円の最終赤字となった。25年3月期も95億円の最終赤字予想で、ふくおかFGから90億円の増資を受けたばかりだ。ふくおかFGの五島久社長も「黒字化(28年3月期)が難しい場合は、撤退や業態の転換もある」という。
赤字の理由には、システムなどの高コスト体質やローン残高の伸び悩み、高い与信費用など、いくつか挙げられるが、最大の要因はターゲットとする顧客層の見込み違いにある。ターゲット層である20~40代のデジタルネーティブ世代の利用が、想定したほど伸びなかったということだ。
そもそも、シニア層が金融資産の大宗を占める日本において、①若年層や資産形成層で、②デジタルリテラシーが高く、かつ③ある程度の余裕資金もある層──は、ボリュームとしては小さい。しかも、コストパフォーマンスやタイムパフォーマンスなどを重視するデジタルネーティブ世代の多くは、楽天やPayPayなどポイント経済圏にひもづいた金融決済サービスを利用している。
住宅ローンは扱わず
スマホ完結のデジタル銀行にスタイリッシュさやステータスは求めておらず、安く早く豊富で、かつポイントがザクザクたまるというのが、彼ら彼女らにとっても重要なのだ。むしろ、楽天やPayPayのテレビCMに代表されるように、ちょっと「ダサい」くらいが利用への敷居は低く、デジタルネーティブ世代を含め大多数の個人顧客にはアピールするのかもしれない。
みんなの銀行では黒字転換を目指し…
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週刊エコノミスト
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