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経済・企業 ネット銀行&ポイント経済圏

資産膨張する主要ネット6行 コロナ禍とキャッシュレスを追い風に 杉山敏啓

 自前のリアル店舗を持たずにネット取引を専業とするネット銀行(インターネット専業銀行)は、日本では四半世紀近く前に登場した。2000年開業のPayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)が第1号で、01年にはソニー銀行と楽天銀行(旧イーバンク銀行)が相次ぎ開業した。07年に住信SBIネット銀行、08年にauじぶん銀行(じぶん銀行)、11年に大和ネクスト銀行が開業して、現在の主要6行が出そろった。

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 ネット銀行の預金残高の推移をみると、成長の勢いが加速している(図1)。主要6行計の残高でいえば、16→20年で1.6倍、20→24年で1.9倍と、同時期の伝統的銀行の残高成長ペースを凌駕(りょうが)する膨張ぶりであった。とりわけ、20年に新型コロナウイルス感染症が深刻化して以降の成長が著しい。24年3月期の主要ネット銀行計の預金残高は34兆円を超え、りそな銀行(35兆円)に迫る水準だ。なぜネット銀行は急成長したのか。

 その背景として第一に、デジタル化の進展を挙げなければならない。スマートフォンが普及し、多くの人々はインターネットに接続した端末を持ち歩く時代になった。18年にはQRコード決済のPayPayが登場し、キャッシュレス決済を普及させるための政府主導のキャンペーンが推進されたこともあり、スマホ決済の利用が広がった。こうした社会全体のデジタル化という環境変化は、ネット銀行にとってフォローの風だ。

 第二の背景として、伝統的銀行の有人店舗やATM(現金自動受払機)設置台数の減少が挙げられる(図2)。また、伝統的銀行は店舗の来店予約制や昼休みの導入、通帳レス化の推進など、顧客のリアル店舗への来店頻度の低下につながる施策を次々と展開したことで、顧客がこれまで重視してきた「近くて便利」という優位性が低下した。ネット銀行にとっては代役を担うチャンスが広がった。

地銀上位行の水準に成長

 キャッシュレス決済は普及したが、現金をまったく使わなくなったわけではない。主要ネット銀行6行がいずれも提携するセブン-イレブンやローソンなどのコンビニATMとゆうちょATMの台数の合計は現在約9万台へと増加し、伝統的銀行の同5万4000台の1.6倍を超える。こうした提携ATM台数の拡充により、現金へのアクセスの面でも伝統的銀行からネット銀行に乗り換えることによる支障は小さくなった。

 銀行のほか信用金庫や信用組合、農協などの預金取扱金融機関計の預貯金残高は、日銀統計(M3)によると約1600兆円であり、ネット銀行の預金の全国シェアは現状2%強とまだまだ限られる。ただ、社会のデジタル化・キャッシュレス化が今後ますます進展することに鑑みれば、ネット銀行の伸びしろは広大といえる。

 ネット銀行の預金残高の規模とその成長性を、国内を主要営業地盤とする地域銀行と比較してみる(図3)。楽天や住信SBIネットの預金残高の規模は、地銀でいえば常陽や広島など上位行に並ぶ水準にまで成長した。図の横軸に示す預金残高の成長率をみると、ネット銀行は全体として地域銀行を凌駕する勢いで、特にauじぶん、楽天の成長率が高い。

 ネット銀行の収益性をROE(株主資本利益率)でみると、ソニー、住信SBIネット、楽天の収益性は伝統的銀行を大きく上回る高さだ(図4)。横軸のコアOHR(経費÷コア業務粗利益)は、数値が低いほど経費効率性が優れる指標で、主要ネット銀行の平均値は3メガバンクに近い水準であり、多くの地域銀行よりも高い。自前のリアル店舗や営業職員を持たず経費構造が軽いビジネスモデルの強みがうかがわれる。

かなり低い不良債権比率

 主要ネット銀行6行の経営指標を、伝統的銀行と比べながら概観する(表、拡大はこちら)。ネット銀行の預金に占める定期預金のウエートは各行各様だが、全体として伝統的銀行の平均よりやや高い。貸出金は個人向けのウエートが総じて高い。法人向け融資と違って個人向けは小口分散化が効いており、カードローンや住宅ローンには保証や担保が付くなど低リスクである。ネット銀行の不良債権比率をみると伝統的銀行よりもかなり低い。

 有価証券運用は6行全体でみて国債や地方債など円債券のウエートが高く、株式や外債といったリスク証券のウエートは伝統的銀行よりも低い。そのため、米国など海外金利上昇に伴って外債の評価損を抱えるリスクも、伝統的銀行に比べて抑制されている。また、6行平均のROEは12%台と収益性は高く、自己資本比率にみる経営健全性の面でも遜色はない。

 6行を個別にみると、預…

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週刊エコノミスト

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