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進むキャッシュレスの現在地とその先 決済比率はすでに4割弱 宮居雅宣

鹿児島市電に導入された「タッチ決済」(2022年10月)
鹿児島市電に導入された「タッチ決済」(2022年10月)

 クレジットカードのタッチ決済や、スマートフォンのコード決済の普及で、財布を持ち歩かない人は珍しくなくなった。

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 コンビニエンスストアやスーパーマーケットのレジで、スマートフォンで支払う客をよく見るようになった。駅では、券売機で切符を買う人がめっきり減った。今年7月から新紙幣が流通し始めたが、SNS(交流サイト)には「キャッシュレス決済ばかりしているので新紙幣をまだ見たことがない」といった投稿、店頭では「券売機の改修コストが高いのでキャッシュレス決済に全面移行します」という告知が見られた。

 経済産業省によると、民間最終消費支出に占めるキャッシュレス決済の比率は2023年、39.3%と、4割に迫る規模まで年々増加している(図)。ただ、この計数にはオンラインゲームなどで流通する「サーバー型電子マネー」(ICチップでなく事業者のサーバーで管理される電子マネー)やプリペイドカードなどが含まれていない。同省はそれらを含めてキャッシュレス決済比率が現行の約7割増になる新指標も発表済みだ。

 メットライフ生命保険が7月に公表したインターネット調査の結果によれば、「4人に1人は普段から財布を持ち歩かない」という。日本人の生活にキャッシュレス決済がかなり浸透してきたといえる。

 最もよく使われるキャッシュレス決済手段はクレジットカードだ。非接触ICで「タッチ決済」が可能となり、クレジットカードをスマホに搭載できるようになった。その結果、コンビニなどで数百円の買い物をする時も、クレジットカードのタッチ決済を利用する人が増えた。

 新型コロナウイルスの世界的感染拡大も、インターネット決済やタッチ決済の普及を後押しした。人々は現金を介した感染を警戒し、海外の交通機関の中にはタッチ決済を導入して現金の受け付けを中止した例もあった。現金自動受払機(ATM)の使用禁止や、タッチ決済の際に暗証番号の入力が必要になる金額を引き上げた国もある。

 日本では「非接触決済」と呼ぶ中に「タッチ決済」に加えて「コード決済」を含めることが多い。コード決済は買い物をする際、スマホ画面にバーコードやQRコードを表示したり、店頭に表示したQRコードを客のスマホアプリで読み取ったりして支払う仕組みだ。日本でも現金の利用を避ける人が増え、「非接触決済」が活発化した。

普及の要因と課題

 コード決済は主にアジアで普及している。日本で普及した最も大きな要因は、何といっても大規模特典だ。火付け役はソフトバンクとヤフーが18年に設立したPayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」だ。それまでコード決済に慎重だった消費者の姿勢を一変させた。16年に始まったスマホ決済の「オリガミペイ」は、特典提供競争についていけず破綻し、メルカリの子会社が運営する「メルペイ」に統合した。

 携帯電話事業者を親会社に持つコード決済事業者は利用代金の20%や30%、時には全額をポイントで利用者に戻すといった前例のないキャンペーンを展開し、取扱高を急速に伸ばした。利用者にとっては、買い物をしてためたポイントを次回の支払いに使え、その買い物で再びポイントを手にできる。店にとっては、ポイント付与が来店を促す動機付けになる。消費者を提携企業群の商圏に引き込む形で、「ポイント経済圏」の拡大を競い合っている。

 店頭表示のQRコードを客が読み取って支払う方法では、店が決済端末を購入する必要がないことも、露店が多いアジア各国や国内の小規模店でキャッシュレス決済が普及した重要な要因だ。利便性と利得性を武器に発展して…

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