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国際・政治 チャイナウオッチ 中国視窓

夏の中国でヒットした喜劇映画「逆行人生」が映す都会生活のリアル 奥山要一郎

シネコンのあるショッピングモールに、他の作品と一緒に並ぶ映画「逆行人生」のポスター(24年8月、筆者撮影)
シネコンのあるショッピングモールに、他の作品と一緒に並ぶ映画「逆行人生」のポスター(24年8月、筆者撮影)

 中国で今夏、あるコメディー映画が話題になった。その名も「逆行人生(Upstream)」。IT企業を解雇された40代男性が一念発起、フードデリバリーの配達員に転身し、生活費捻出や住宅ローンの支払いに奔走するストーリーだ。配達効率を上げようと、元プログラマーの経験を生かし地図アプリを独自開発するなど大活躍。一方、配達を急ぐあまり交通事故に遭ったり、客から「たかが配達員」とさげすまれたりするシーンも盛り込まれている。

 中国で「外売(ワイマイ)」と称されるフードデリバリー。今や市民の生活に不可欠となった。中国インターネット情報センター(CNNIC)によると、2023年末時点での利用ユーザー数は5億4454万人。ネット民全体の49.9%にあたり、2人に1人が利用していることになる。

 ビジネスモデルとしては、08年設立のスタートアップ「餓了麼(ウーラマ)」が原型とされ、同社と美団(メイトゥアン)が“出前2強”だ。イメージカラーは前者が青、後者が黄色。街はこの2色のユニフォームを着た配達員の電動バイクであふれている。

 一番の稼ぎ時は、オフィスワーカーがこぞって注文するランチタイム。多くの会社が入る高層ビルではドア・ツー・ドアの手渡しが難しく、1階エントランス脇に「出前ロッカー」が設けられている。QRコードやパスワードを使って開錠し、非接触・非対面で配達完了だ。業務用ラックのような「出前棚」だけの場合もある。配達員は注文品を棚に置き、受取人は自身の注文番号を手掛かりに探し出す。取り間違えには要注意だ。

 筆者も普段はもちろん、出張や旅行先でのホテルでもよく使う。地元グルメを1人用定食として届け…

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