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経済・企業 復活する会社

ヒロボー――ラジコンヘリからプラスチックへ 大宮知信/9

産業用ドローンは農薬散布から災害現場の調査などさまざまな用途に使われている ヒロボー提供
産業用ドローンは農薬散布から災害現場の調査などさまざまな用途に使われている ヒロボー提供

 かつてラジコンヘリで世界トップクラス、国内シェア1位に上りつめたヒロボー(広島県府中市)。付加価値の高いプラスチック事業で生き残りを図り、今はドローンに挑戦している。

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 広島県府中市に本社を置くヒロボーは「広島紡績」の略。かつて衰退産業の繊維からラジコン事業へ転換し、地方発ベンチャーとして注目されてきた。設立は1949年、3代目の松坂晃太郎現社長(54)は各地の仏教系寺院で修行した元僧侶という異例の経歴を持つ。

 70年以上製造業を続けているヒロボーの歴史で最初の大きな危機は第1次石油ショックと円高不況。繊維産業が壊滅的な打撃を受け、創業者の松坂美登(よしのり)さんはボウリング場経営に乗り出した。しかしブームはすぐに去って事業転換は失敗。再建のさなかに美登さんが病気となり、倒産寸前となった。

 長男の敬太郎さんが病床の父から経営を託されたのは72年、28歳の時。紡績事業から撤退し、資金繰りに奔走しながら電機部品やプラスチック製品の下請けに活路を見いだした。

「当時、大手食品メーカーがチョコレート菓子に挿す棒をプラスチックで作る取引先を探していた。それをやらせてもらったのが、プラスチックを始めるきっかけと聞いています」と晃太郎さんは語る。

 ただ、技術力不足で、依頼されるのはチョコレートの棒や豆腐の容器など簡単なものばかり。収益が上がらず、一向に借金は減らなかった。そんな中で2代目社長が取り組んだのが、自分が好きだったミニカーの開発だった。しかし国際見本市にミニカーの試作品を持ち込んだものの、見向きもされなかった。たまたまその会場で目にしたのがラジコンヘリ。競合メーカーが少なく成長する分野だと踏んで参入を決めた。

 85年に苦心の末、小型モデルの「シャトル」を発売。当時ラジコンカーブームだったこともあり、従来品より低価格で初心者にも扱いやすいラジコンヘリは大ヒットした。ヒロボーのラジコンヘリは世界のトップブランドに躍り出た。88年からは産業用ヘリに幅を広げ、農薬散布ヘリなどさまざまな用途のラジコンヘリを開発し、経営の屋台骨となった。

僧侶を襲った2度目の危機

 2度目の危機は、2代目社長が2011年に病いに倒れたことだ。当時、リーマン・ショックから続く世界的な不況も重なって、売り上げは最盛期の10分の1に激減した。その後を託されたのが3代目の晃太郎社長だ。

 晃太郎さんは技術者を目指して大学院まで進んだが、ものより人に興味を抱き、卒業後は仏門に。関西の寺で修行をしながら、歩き遍路の専門誌作りに従事していた。仏門の師には、「もし父が亡くなったら社長を引き継げ」と約束させられていた。その父はがんを宣告され、晃太郎さんに何も教えないままあっという間に他界してしまった。

 晃太郎さんは苦しかった当時を振り返ってこう語る。

「取引先に『お前とは付き合わない』と言われ、仕事をばんばん切られました。3期連続赤字で、銀行からは『もう倒産だ』と言われました。『もう一回赤字を出したら、取引をやめる』と」

 取引先を回って仕事の開拓に取り組む中で、ある企業が自動車のガ…

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週刊エコノミスト

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