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週刊エコノミスト Online 書評

人と人の親密な関係性 多数の論客が多彩に分析 荻上チキ

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 さて、あっという間の総選挙であったが、この原稿を書いている今は、投票結果がまだ明らかではない。石破茂総理は「日本創生解散」と名付けたが、ピンと来なかった。解散権だけでなく、解散の命名権も総理の専権事項としたのだろうか。

 スローガンのピンと来なさは、2017年の「国難突破解散」の時もそうであった。「国難」とは「少子高齢化」「北朝鮮による脅威」の二つ。今、それらの国難が解決されたようには見えない。非婚化・晩婚化や育児支援は、大きな課題のままである。

 政治の変化の遅さが目立つが、人々の「親密な関係」は日々変化を続けている。そのありようを整理してくれる待望の教科書が出た。『恋愛社会学 多様化する親密な関係に接近する』(高橋幸、永田夏来編、ナカニシヤ出版、2640円)である。

 本書は大学で恋愛社会学を学ぼうとする人向けに書かれているが、学習意欲のある初学者向けにもわかりやすい。信頼できる編者や執筆者が並んでおり、発売を楽しみにしていた。「婚姻」や「出産」が政治的テーマになり続けているように、恋愛という個人間の営みは、社会的な営みとしても捉え直されるものだ。

 現在、未婚率の上昇だけでなく、生涯無子率(50歳時点で一人も子供を産んでいない女性が、同年齢層に占める割合)も3割弱にまでなっている。結婚は高い確率で起きるライフイベントではなく、主体的な労力の投入が必要な行動となっている。

 お見合い婚が多数派となる以前は、地域共同体の中での「村内婚」が多数見られた。身分制度の解体や近代化により、婚姻において「家」の存在感が増し、家父長の役割が重視されるとともに「見合い婚」が増え、離婚を忌避する風潮が強まった。

 しかし今では見合い婚は減少、恋愛結婚やアプリ婚の割合が上昇している。個人の「恋愛感」こそが「出会い」における重要事項となったが、しかしこれまで「恋愛」は「結婚したい気持ち」と読み…

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