無人タクシーが走る中国・武漢のショッピングモールも無人だった 久保和貴
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10月初旬、筆者は湖北省武漢市に赴き、ロボタクシー(完全無人の自動運転タクシー)に乗ってみた。同市では2022年8月から一部地域でロボタクシーが走り始めており、市内では大勢の観光客が物珍しそうにロボタクシーを撮影していた。一部地域といっても空港を含む市内のほぼ全域をカバーしており、事実上ロボタクシーだけで市内の移動が完結してしまう。
筆者はロボタクシーについて「路上のビニール袋を猫と誤認して停止する」「ロータリーでは立ち往生して大渋滞が起きる」といった前評判を耳にしており、今回の視察もトラブルを半ば期待して乗った面もある。ただ、実際乗ってみると思いの外スムーズで、横道から突然現れたバイクには徐行して先に行かせたり、交差点では対向車のスピードを見ながら行ける時に行ったり、といった人間らしい判断が随所に見受けられた。
夜になるとロボタクシーを見かける機会も増え、ロータリーなどでもやや慎重さは残しつつも流れに乗って移動していた。ヒトが運転する車の後ろをロボタクシーがゆっくり付いていく様子はいじらしくもあり、人とロボットが共生する社会を予感させた。
武漢では無人タクシーという科学技術の粋とも言える体験ができた一方、視察した高級ショッピングモールもまた「無人」の状態であった。中国で高級ブランドの販売不振が注目されて久しいが、高価格帯消費の失速、低価格帯消費の加速といった状況は上海から遠く離れた武漢でうかがえた。
消費回復の勢いが鈍い背景には、所得回復のペースが鈍いことがある。今年1~9月累計の1人当たり平均可処分所得は前年同期比4.9%増で、新型コロナウイルス禍前の18年の前年比6.5…
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週刊エコノミスト
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