「小さく美しい」路線に転じた「一帯一路」 中国の求心力に低下懸念も 岸田英明
対外協力では「小さくて美しい」プロジェクトを優先すべし──中国の習近平総書記は、2023年11月に党や企業の幹部らを集めて開いた「一帯一路」建設座談会でこう語った。それから約1年、24年9月上旬に北京で開いた第9回中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC)で採択した「北京行動計画(25〜27年)」では、中国がアフリカに1000の「小さくて美しい」プロジェクトを提供することが記されている。
中国メディアによると、「小さくて美しい」プロジェクトは、低コストで持続可能性がある、あるいは小規模で低リスクな方向性を持ち、インフラや医療、環境、農業、貧困などの問題に関して、相手国の人々の目に見えて幸福感に資する案件を指すのだという。「小さい」に明確な定義はないが、一帯一路の研究者では「5億ドル以下の案件」とする見方もある。「美しい」の方はさらに定義が難しいが、庶民の日々の暮らし向上に資することが重要な条件のようだ。
中国の一帯一路公式サイトには、「小さくて美しい」プロジェクトに関する記事を集めたページがある。本稿執筆時点での最新の記事は10月16日に新華社が配信したもので、ギニア湾の島国サントメ・プリンシペに中国の農業専門家が赴き、同地の気候や土壌に合った野菜の栽培を指導するなどして、現地の農家の収入増と貧困解消に貢献した、という内容だ。また、中国が各国に展開する職業訓練施設「魯班(ルーバン)工坊」の活動を紹介した記事では、ケニアの事例として、現地の学生ら300人以上にAI(人工知能)やネットワークセキュリティーなどのデジタルスキルの訓練を行ったことが記されていた。ちなみに「魯班」とは春秋…
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週刊エコノミスト
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