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「女系」容認は多数派だが立憲民主党の微妙な事情 成城大教授・森暢平

国会を背に記念撮影する立憲民主党の議員たち(2024年11月11日)。同党内の皇位継承議論の行方は見通せない
国会を背に記念撮影する立憲民主党の議員たち(2024年11月11日)。同党内の皇位継承議論の行方は見通せない

◇社会学的皇室ウォッチング!/136 これでいいのか「旧宮家養子案」―第38弾―

 前号で、自民党から当選の衆院議員の女性天皇・女系天皇への賛否分布を示した。今回は野党第1党の立憲民主党の状況を見てみよう。ほとんどの議員は女性天皇賛成である。しかし、「女系」天皇に対する賛成は51%と多数派であるものの、半数をわずかに超すという微妙な結果となった。立憲民主党が、「女系」容認に踏み切れない事情はどこにあるのだろうか。(一部敬称略)

 前回と同じく、結果がインターネット上で公開されているNHKの候補者アンケートを用いて分析した。立憲民主党の今回の衆院選当選者は148人で、全員が回答している。

 女性天皇に賛成は133人(90%)、回答なしは13人(9%)、反対が2人(1%)だった。世論調査の結果とほぼ一致した。一方、女性天皇の子が皇位を継承すること、つまり「女系」については、賛成が75人(51%)、回答なしが34人(23%)、反対が39人(26%)となった。こちらは、おおむね8割台の支持がある世論調査より賛成が少ない。

 逆に、女性天皇も「女系」も反対とした議員は、長谷川嘉一(群馬3区)▽原口一博(佐賀1区)〔比例復活の場合でも出馬した選挙区名を挙げた。以下同じ〕。女性天皇の質問には答えず、「女系」に反対とした議員は、高松智之(東京28区)▽亀井亜紀子(島根1区)だった。2人が女性天皇に明確に答えを出さないところから考えると、実質的には女性天皇にも反対の気持ちが強いのだと推測される。

 微妙なのは、女性天皇には賛成だが、「女系」には反対とした35人である。具体的には、荒井優(北海道3区)▽西川将人(同6区)▽階猛(岩手1区)▽緑川貴士(秋田2区)▽玄葉光一郎(福島2区)▽青山大人(茨城6区)▽藤岡隆雄(栃木4区)▽坂本祐之輔(埼玉10区)▽森田俊和(同12区)▽田嶋要(千葉1区)▽谷田川元(同10区)▽篠原豪(神奈川1区)▽山崎誠(同5区)▽江田憲司(同8区)▽笠浩史(同9区)▽太栄志(同13区)▽後藤祐一(同16区)▽宗野創(同18区)▽落合貴之(東京6区)▽五十嵐衣里(同30区)▽近藤和也(石川3区)▽今井雅人(岐阜4区)▽渡辺周(静岡6区)▽源馬謙太郎(同8区)▽牧義夫(愛知4区)▽岡本充功(同9区)▽重徳和彦(同12区)▽大西健介(同13区)▽森山浩行(大阪16区)▽井坂信彦(兵庫1区)▽津村啓介(岡山2区)▽佐藤公治(広島5区)▽稲富修二(福岡2区)▽城井崇(同10区)▽山田勝彦(長崎2区)―となる。

◇保守/リベラル 静かな対立

「女系」反対の全39人には、立憲民主党政調会長の重徳和彦が会長を務める政策集団「直諫(ちょっかん)の会」(重徳グループ)のメンバー10人がいる(高松、緑川、藤岡、森田、篠原、山崎、落合、源馬、重徳、井坂)。重徳グループには旧宮家養子案を支持する発信をする者も多く、党内で男系を推す一団をなす。

 また、「女系」反対の39人には、2020年9月に、旧立憲民主党が、旧国民民主党ほかと合流した際、旧立憲民主党以外から加入した議員が目立つ。原口、高松、階、緑川、玄葉、青山、森田、田嶋、谷田川、江田、笠、太、後藤、近藤、今井、渡辺、源馬、牧、岡本、重徳、大西、井坂、津村、佐藤、稲富、城井である。

 枝野幸男が代表を務めていた旧立憲民主党は19年6月の段階で、安定的な皇位継承に向けた論点整理を発表、女性天皇だけでなく、「女系」を認めた。旧立憲民主党は、旧宮家男性の皇籍復帰を認めることは困難だと明確に述べていた。

 他方、玉木雄一郎が代表を務めていた旧国民民主党も同月、「皇位検討委員会」(座長・津村啓介副代表)が皇室典範改正案をまとめた。ポイントは、皇位継承資格を「男系の男子」から「男系の子孫」と変更し、女性天皇は認める内容としたことだ。ただ、記者会見した玉木は、「男系の系統を守っていくことが安定的な皇位の継続性を考える上で重要だ」と説明し、旧宮家復帰案を重視する考えも示していた。

 すなわち、新しい立憲民主党が発足する1年前、旧宮家復帰をめぐって、旧立憲民主党と旧国民民主党はまったく異なる立場を取っていたのである。今も、保守とリベラルが党内で併存し、潜在的な対立の芽をはらんでいるのは、過去の経緯が影響する。

◇「多数」なのに声小さい女系派

 とはいえ、女性天皇にも「女系」にも賛成する議員は立憲民主党内では多数派である。とくに女性議員の多くが「女系」に賛成しているのは心強い。心配なのは、「女系」派の声が大きくないことだ。

 立憲民主党は今年3月12日、皇位継承に関する論点整理を発表した。これを検討した「安定的な皇位継承に関する検討委員会」の委員5人のうち、女性天皇と「女系」に賛成すると明言するのは、吉田晴美(東京8区)ひとりだけだ。女性委員も吉田だけで、バランスが悪い。

 さらに、「論点整理」は、その名のとおり、論点を整理しただけ。女性宮家案のうち、夫と子が皇族になる案、ならない案のメリット、デメリットを挙げたが、賛否は明言していない。党内のバラバラな意見に配慮し、党の方針は掲げていないのだ。

 執行部では、代表の野田佳彦、幹事長の小川淳也、政調会長の重徳はいずれも女性天皇に賛成だ。だが、「女系」については、野田、小川が回答なし、重徳は反対だった。つまり、一般議員レベルでは「女系」を認めてよいという議員が多いのに、執行部レベルになるとそうした声が反映しにくい構造になっている。

 立憲民主党内の「女系」派にもっと声を上げてもらいたい。

<サンデー毎日12月15-22日合併号(12月3日発売)より。以下次号>

■もり・ようへい

成城大文芸学部教授。1964年生まれ。博士。毎日新聞で皇室などを担当。CNN日本語サイト編集長、琉球新報米国駐在を経て、2017年から現職。著書に『天皇家の財布』(新潮新書)、『天皇家の恋愛』(中公新書)など

サンデー毎日12月15-22日合併号表紙
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