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当選した自民党議員には女性天皇容認も少なくない  成城大教授・森暢平

皇居での認証式を終えた第2次石破内閣の閣僚たち。この石破内閣で皇位継承問題は進展するのだろうか(2024年11月11日)
皇居での認証式を終えた第2次石破内閣の閣僚たち。この石破内閣で皇位継承問題は進展するのだろうか(2024年11月11日)

◇社会学的皇室ウォッチング!/135 皇室これでいいのか「旧宮家養子案」―第37弾―

 自民党は、反女性天皇、反女系天皇の政党であるように考えられている。だが、今回衆院選における候補者アンケートの結果を分析すると、当選した議員には少なくとも女性天皇を容認する議員も少なくないことが分かる。(一部敬称略)

 結果がインターネット上で公開されているNHKの候補者アンケートを用いて分析した。自民党当選者191人に、当選後、無所属の会として同党と会派を組んだ6人を加えた197人の回答を対象とした(うち、首相の石破茂ら3人はNHKに対し回答しなかった)。

「女性天皇の子どもが皇位を継承すること、つまり『女系』の天皇を認めることに賛成ですか。反対ですか」という質問に、反対と答えたのは148人(75%)、設問に回答しなかったのは41人(21%)、賛成は5人(3%)だった。

 結果を見ると、自民党・無所属の会の議員主流が、「女系」拒否であることは疑いようがない。ただ、「女系」に反対の148人の内訳を見ると、女性天皇にも反対は55人に留(とど)まる。148人のうち女性天皇には賛成が43人であり、回答なしは50人だった。すなわち、「女系」には反対だが、女性天皇は認めてもよいという議員は、自民党内のそれなりの勢力である。

 女性天皇に賛成、「女系」に反対の43人の名を記すと、津島淳(青森1区)▽田所嘉徳(茨城1区)▽国光文乃(同6区)▽船田元(栃木1区)▽笹川博義(群馬3区)▽福田達夫(同4区)▽小渕優子(同5区)▽小泉龍司(埼玉11区)▽田中良生(同15区)▽英利アルフィヤ(千葉5区)▽松本尚(同13区)▽中西健治(神奈川3区)▽三谷英弘(同8区)▽田中和徳(同10区)▽河野太郎(同15区)▽草間剛(同19区)▽中谷真一(山梨1区)▽石原宏高(東京3区)▽土田慎(同13区)▽大西洋平(同16区)▽安藤高夫(同28区)▽長島昭久(東京30区)▽斎藤洋明(新潟3区)▽井出庸生(長野3区)▽後藤茂之(同4区)▽野田聖子(岐阜1区)▽井林辰憲(静岡2区)▽大岡敏孝(滋賀1区)▽武村展英(同3区)▽関芳弘(兵庫3区)▽渡海紀三朗(同10区)▽小寺裕雄(近畿)▽逢沢一郎(岡山1区)▽寺田稔(広島4区)▽小林史明(同6区)▽高村正大(山口1区)▽石橋林太郎(中国)▽仁木博文(徳島1区)▽栗原渉(福岡5区)▽江藤拓(宮崎2区)▽古川禎久(同3区)▽宮路拓馬(鹿児島1区)▽宮崎政久(沖縄2区)〔比例復活の場合でも出馬した選挙区名を挙げた。以下同じ〕――である。

「女系」賛成議員も5人 世論に配慮する議員も

 このなかで、例えば、長島昭久は強硬な旧宮家復帰論者である。一方、船田元は、「女系」を排除せず、継承の安定化につなげるべきだとし、旧宮家養子案については国民の賛同が得られるのかと懐疑的意見を述べている(今年4月30日のメールマガジン)。すなわち、「女性天皇」をどのくらい優先するのかについて、議員ごとに温度差はあるだろう。しかしながら、歴史上前例がある女性天皇については容認する自民党議員は少なくないのだ。

 驚くべきことに、松島みどり(東京14区)▽伊藤忠彦(愛知8区)▽若山慎司(同10区)▽島田智明(大阪15区)▽広瀬建(大分2区)の5人は、女性天皇だけでなく、「女系」も容認している。さらに、神田潤一(青森2区)▽土屋品子(埼玉16区)▽鈴木馨祐(神奈川7区)▽堀内詔子(山梨2区)▽根本幸典(愛知15区)▽谷公一(兵庫5区)▽松本剛明(同11区)▽山口壮(同12区)▽山下貴司(岡山2区)▽村上誠一郎(四国)▽岩屋毅(大分3区)▽阿部俊子(九州)の12人は、女性天皇には明確に賛成で、「女系」への回答は保留している。場合によっては「女系」賛成もあると世論に配慮した回答と読むこともできる。

 自民党は4月26日、「安定的な皇位継承の在り方に関する所見」を発表し、女性皇族が結婚して皇族身分を保持するとしても、当該女性皇族が天皇になる可能性には言及せず、その配偶者と子は皇族の身分としないとして、制度が「女系」継承へとつながることへの警戒をにじませた。

 そもそもこの所見をまとめた自民党の皇位継承懇談会は、保守系団体「日本会議」と強いつながりを持つ中曽根弘文、衛藤晟一、山谷えり子、有村治子(いずれも参議院議員)をメンバーに入れ、党内保守派の意見が反映される構成となっていた。女性天皇と「女系」を排除し、旧宮家養子案を進めるための組織だった。

反保守派狩りと愛国的矯正主義

 自民党ではいま女性天皇と「女系」に反対する議員ばかりが目立っている。9月の総裁選立候補者を見ても、茂木敏充、小林鷹之、高市早苗、加藤勝信、林芳正が、女性天皇にも「女系」にも反対であると、今回の候補者アンケートに答える。

 保守的思想に背く発言や行動を排除しようとする動きを「パトリオティック・コレクトネス」(愛国的矯正主義)と呼ぶことにしよう。保守派は、自陣営のなかに、少しでもリベラル要素がある人物がいると徹底して叩(たた)き、「保守」に封じ込めようとする。「反保守派」狩りである。石破茂、河野太郎が典型的なターゲットとなる。

 しかし、それは、女性天皇には9割、「女系」にも8割台の支持がある世論調査の結果と大幅に異なる。その矛盾には自民党議員自身が気付いているはずだ。だからこそ、党内には「女系」に賛成する議員がいるし、世論に配慮する議員がいる。議員が民選である以上、それは健全なことだ。願わくはより多くの議員に民意の在(あ)り処(か)についてももっと気付いてほしいところだが……。(以下次号)

もり・ようへい

 成城大文芸学部教授。1964年生まれ。博士。毎日新聞で皇室などを担当。CNN日本語サイト編集長、琉球新報米国駐在を経て、2017年から現職。著書に『天皇家の財布』(新潮新書)、『天皇家の恋愛』(中公新書)など

サンデー毎日 1208号表紙 岩田剛典(三代目J SOUL BROTHERS)
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サンデー毎日12月8日号(11月26日発売)には、他にも「アベノミクス、安保法制、歴史認識… 徹底検証 安倍晋三とその時代」「朗報 新説 高齢になるほど幸せになる!」「客船クルーズ 空前のブーム到来!?」などの記事も掲載しています。

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