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経済・企業 経済学の現在地

稲盛経営を聞く「『謙のみ福を受く』今も心に」井上高志・LIFULL会長

 京セラの創業者で、KDDI設立や日本航空再建にも関わった故・稲盛和夫さんが、自らの経営体験に基づいて提唱した経営哲学は、多くの経営者や企業に影響を与え続けている。教えを継承する2社に聞いた。(聞き手=安藤大介・編集部)

井上高志(いのうえ・たかし) 1968年生まれ。91年青山学院大学経済学部卒業、リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。95年に独立して不動産サービスを開始。97年にネクスト(現LIFULL)を設立して社長。2023年12月から現職。

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──「利他主義」(他者の幸福や利益を優先するという考え方)を社是に掲げている。

■新卒で入社したマンションデベロッパーでの経験が原点になっている。入社後間もなく新築の分譲マンション販売の営業をしていた時のことだ。内見に来た夫婦が希望の物件を購入しようと申し込んだものの、住宅ローンの審査が通らなかった。他の物件を紹介したが、希望通りに満足してもらえるものが、どうしてもなかった。

 落胆する様子を見て、何とかならないかと考えるうちに、他社の物件を紹介することを思いついた。客のふりをして、他社の資料を集め、ある物件を薦めたところ、気に入ってもらえた。契約後に訪ねてきた夫婦から「本当に満足できるマンションを買うことができた」と笑顔で感謝された時に、「一生懸命寄り添って頑張れば、顧客の人生の一部を満たすことができる。この仕事はすごく満足度が高い」と感じた。上司からは「目の前の客をなぜ他の会社に紹介したんだ」と怒られたが、「自分のノルマさえ達成できれば何の文句もないだろう」と思った。

著書読み「利他で行く」

── 26歳で独立、起業した。

■何をどうしていいか分からず、成功した経営者の本を読みあさった。稲盛和夫さんの語り口が分かりやすく、すっと染みこんできた。『成功への情熱』という本で、「利他の心」というキーワードが出てきた。利他というのは正直、そのとき初めて見た言葉だったが、「利他で行こう」と。

 長年、自分の母親が老人ホームのボランティア活動をしていた影響が大きかったと思う。新卒で入った会社でも、利他的な…

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経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中郁次郎 一橋大学名誉教授「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化■大垣昌夫23 Q&Aで理解す [目次を見る]

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