インタビュー「社会的弱者がESGに共感を寄せる契機を探して」夫馬賢治・ニューラルCEO
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反発の声も高まるESG(環境・社会・企業統治)投資。取り組み継続のカギとして「共感」の重要性を指摘するニューラルCEO(最高経営責任者)の夫馬賢治氏に話を聞いた。(構成=安藤大介・編集部)
夫馬賢治(ふま・けんじ) 1980年生まれ。東京大学教養学部卒業。リクルートエイブリック(現リクルート)などを経て、2013年7月にサステナビリティー経営・ESG投資アドバイザリー会社ニューラルを創業、現職。
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「ESGは本当に共感を呼ぶのか」。社会の分断が進む中、こうした疑問は、まさに最前線で議論されるテーマになっている。
例えば、再生可能エネルギーの拡大は今、難しい政治課題になっている。「生活が苦しい中、コストを引き上げて市民を苦しめるのか」と反発する声が世界各地で上がっている。「なぜ、やるのか」「どうして必要なのか」を深く説明するところまで含めて取り組まず、ただ、気候変動対策に取り組むだけでは、共感を呼ぶことはできない。
時間軸のずれで生じる分断
背景には世界的なインフレがある。新型コロナウイルス禍、ウクライナ戦争などの要因で起きたインフレは、消費者の暮らしを崩し始めている。消費者の目線は政府や企業と比較すると短期志向で、「生活が苦しくて、むしろ値下げしてほしい」との声が上がる。有機農業の推進を巡っても、「なぜ、割高になるようなものを、わざわざ進めるのか」となる。政府や企業などが10年、20年先を見据えて動こうとしても、時間軸のずれが社会的な分断を生んでいる。
アンチESGの動きが顕著な米国では、ねじれが大きくなっている。バイデン政権がエネルギー転換に巨額の予算を付ける中、事業を進めてきたエネルギー大手企業の多くは民主党の政策を支持してきた。これに反対しているのは、いわゆる「没落中間層」であり、弱者が共和党の巨大な支持層となってきた。こうした状況では、社会の共感を生まない限り、長期的に物事を進めることはできない。
そこで、共感を生むやり方について、さまざまな模索が始まっている。
重要な柱の一つはサイエンスだ。「偽科学」「陰謀論」のような話も出てくる中…
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週刊エコノミスト
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