経済・企業 マグロ資源の危機
インタビュー「持続可能なマグロ漁を支援 産直の普及拡大に取り組む」澤上篤人・さわかみホールディングス代表取締役
有料記事
澤上篤人・さわかみホールディングス代表取締役
和歌山県那智勝浦町の水産会社を支援するさわかみホールディングスの澤上篤人代表取締役に話を聞いた。(構成=和田肇・編集部)
さわかみ・あつと 1947年3月生まれ。71~74年スイス・キャピタル・インターナショナルにてアナリスト兼ファンドアドバイザー。80~96年ピクテ・ジャパン代表。96年にさわかみ投資顧問(現さわかみ投信)を設立し、99年「さわかみファンド」を設定。日本の長期運用のパイオニアとして活動中。
私がさわかみグループを創立した目的は、「より良い世の中づくり」だ。「どんな世の中を次世代へ残していけるか」を徹底的に考え、「心豊かに生活できる社会の実現」を目指す。経済的自立を背景に「品格ある美しい生き方を模索する」ことに全社員が取り組んでいる。そうした理念に基づきグループは現在、10の事業を展開中で、その一つが和歌山県那智勝浦町の勝浦漁港のマグロ漁支援だ。
きっかけは、グループの一般財団法人さわかみ財団を通じて行っている熊野古道(三重県熊野市、和歌山県)の修復や植林活動(和歌山県龍神村)だ。距離的に近いこともあって勝浦漁港のヤマサ脇口水産と出会った。そこでマグロ漁が置かれている厳しい現状を初めて知った。
那智勝浦町は、かつては豊富なマグロの水揚げ量を誇り、とても栄えた地域だった。
しかし、今はマグロ漁師のなり手にも事欠く状況だ。船齢を重ね本来なら新造すべき時期を超えながらも操業するマグロ漁船も少なくないという。
私が単に後継者不足で寂れていく漁港の現状に同情して支援を決断したのではない。ここの漁協は、1981年から巻き網漁の船の入港を禁止し、はえ縄漁のマグロだけを水揚げしている珍しい漁港だからだ。巻き網漁は、未成魚を含めて魚を根こそぎ取ってしまう漁法だ。効率的だが、勝浦漁協はマグロ資源の持続可能性を脅かすとし、マグロ一本釣りのはえ縄漁にこだわっている。
そんな勝浦漁港で、マグロ卸や漁業者支援をするヤマサ脇口水産は、はえ縄漁法で取れた質の高いおいしいマグロを消費者に知ってもらう取り組みを始めた。それが独自プロセスで加工した…
残り755文字(全文1655文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める