検証・戦後日米首脳会談 第11回 日米関係は複合摩擦の時代に 元首相・中曽根康弘(下)(1991年3月26日)
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週刊エコノミストは1991年1月~5月、戦後の日米首脳会談の裏側で何かあったのかを歴代の首相、外務大臣、官房長官などの証言を基に総点検した連載「検証・戦後日米首脳会談」を掲載しました。「エコノミスト創刊100年特集~Archives」でこれを再掲載します。※記事中の肩書、年齢等は全て当時のままです。
◇「安保」プラス政治的屋根の構築を
“ロン・ヤス関係”にもかかわらず、日米関係は厳しくなる一方。中曽根政権の5年間で、対米貿易黒字は4倍強にふくらみ、東芝ココム事件、FSX騒動が追い打ちをかけた。日米関係は、経済プラス安保の複合摩擦の時代に突入したのである。
語る人=元首相・中曽根康弘(下)/聞き手=本誌編集委員・鈴木健二
── 12回の首脳会談を個々に振り返っていくとそれだけでも大変な時間がかかりますので、総括的に見てみたいと思うのですが、この5年間ではやはり何と言っても経済問題が大きかった。中でも対米貿易黒字問題。中曽根さんが首相に就任した82年の貿易黒字は123億ドル、退かれた87年が525億ドル。もちろん首相として、MOSS(市場指向型個別)協議を導入したり、経済構造調整研究会を設置したりして色々努力はされるのだろうけれど、さっぱり効果があがらない。それで米国のマスコミも、例えば86年4月の8回目の首脳会談のときなんか「8回の会談のうち7回、経済政策について合意したが、その間に貿易赤字は3倍にふくらんだ」と『ニューヨーク・タイムズ』紙などに書かれる。マスコミも議会も相当いらいらしていた。中曽根さんは、レーガンさんと交渉されていて、これはどのように説明されていったのですか。
レーガノミックスの問題点
中曽根 それはね、一つはレーガノミックスの関係によるんだな。米国の競争力の問題もある。
非常な高金利で、そして非常に「強いドル」で、消費をあおった。で、ブラックホールに吸収されるように米…
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週刊エコノミスト
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