週刊エコノミスト Online2040年の社会保障を考える

『平穏死』を迎えるために 延命至上主義からの脱却を=石飛幸三/35

「自然死の場合は“自然の麻酔”がかかります」(撮影=大木啓至)
「自然死の場合は“自然の麻酔”がかかります」(撮影=大木啓至)

「人生最期の迎え方がその時代の文化を示す」と言われます。今や日本は、世界でも有数の超高齢社会になりました。科学の進歩により、治せる疾患は増えました。しかし、老衰は自然の摂理です。人間の考える科学、医学がいくら頑張っても、人間をいつまでも生かすことはできません。

無用な苦しみも

 まだ先がある人生の途上で、疾患を治療する時は医療の出番ですが、人生最終章の人とその家族を支えるのは介護、看護です。今、我が国では、医療従事者と家族が「延命至上主義」に走り、短絡的に医療を押し付けて、かえって、本人に無用な苦しみを与える過ちを犯しているのではないでしょうか。

 私は血管外科医を約半世紀務めてきました。外科医の時分は、救急外来の患者さんに、「なぜ今すぐ入院しない、命あっての人生ではないか」と言って、即刻入院を命じました。まだ先の人生があるならそれは正しい。しかし人生最終章の人に、同じように「命を粗末にしてはいけない」と、ただ医療を押し付けていて、それでよいのでしょうか。

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