教養・歴史書評

理念と理念の分裂から人と人が対話する時代へ=ブレイディみかこ

×月×日

 英国で、ベネディクト・カンバーバッチ主演の『Brexit :The Uncivil War』というドラマが放送された。EU(欧州連合)離脱の国民投票前に繰り広げられた離脱派と残留派のPR戦の内幕を描く作品だ。これを見て考えたのは、情報戦における「言葉」の役割だ。残留派は事実を示すデータやエビデンス(証拠・裏付け)に重点を置いたが、離脱派は人々の深層心理にこびりつく、彼らの人生の物語を代弁できるスローガンを練りに練った。

 A・R・ホックシールドが、『壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き』(岩波書店、2900円)で「ディープストーリー」と呼んだもののことを思い出した。それは必ずしも真実ではなく、「あたかもそのように感じられる」物語であり、シンボルという言語を使って感情が語る物語のことだ。

残り1001文字(全文1360文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事