教養・歴史書評

アマゾンの直取引が意味するもの=永江朗

 アマゾンジャパンは書籍・雑誌・コミックについて、買い切りを条件に出版社と直接取引していく試みを年内に開始すると発表した。これが日本の出版産業にどのような影響を及ぼすのか考えてみたい。

 まず「買い切り」は珍しいものではない。というか、アマゾンに限らず、出版社・書店間においては買い切りが原則である。ただし、新刊の一部は期限を設けて返品できる。新刊委託と呼ばれるが、書店には全額請求されるので、一般的な意味での委託ではなく、正確には返品条件つき仕入れである。返品期限は書籍で105日間だ。期限を過ぎてしまうと返品できない。

 新刊委託ではない商品も基本は買い切り。だから、たとえば書店がブックフェアなどを行うために仕入れるときは、事前に出版社と交渉して返品可としておく。客が注文した本をキャンセルした場合も、出版社と交渉して了解を取らないと返品できない。ただ、1970年代に大手出版社が相次いで文庫を創刊したとき返品条件を大幅に緩和したことから、「書籍・雑誌は返品自由」というイメージが広がっていった。

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