教養・歴史書評

『中国・新興国ネクサス 新たな世界経済循環』 評者・高橋克秀

編者 末廣昭・田島俊雄・丸川知雄 東京大学出版会 5000円

貿易大国化する中国軸に世界経済の変化読み解く

 これからの世界経済の構造変化は、中国と新興国との経済貿易関係(ネクサス=結びつき)の深化が主役であり、中国と先進国とのネクサスは脇役になるだろう。アメリカが自国市場を閉じれば、中国と新興国の関係はますます深まる。その結果、アメリカが世界経済の「中心」から転落する時期は早まる。そして中国が新興国から資源や農産品などの1次産品を輸入して工業製品を輸出するという「中心・周辺」構造はさらに鮮明になる。こうした本書のメッセージは、前半のマクロ的・政策的観点と後半のミクロ的・産業的視点から多角的に考察される。

 第5章「中国の食生活の向上と新興国への影響」は斬新な切り口である。中国の食生活が所得の上昇と健康志向の高まりによって高度化し、その影響が新興国の産業構造を変化させる点に着目した。中国では食用・食品加工用として植物油需要が急速に拡大している。その代表はアブラヤシから得られるパーム油である。中国はパーム油をほぼ全量輸入に頼っており、マレーシアとインドネシアからの輸入が急増している。

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