教養・歴史書評

江戸と似た古代ローマに信仰を貫く葛藤を読む=本村凌二

 英米系の学者から日本人作家の小説を推してくれと頼まれたことがある。私が挙げた数冊の中でも、江戸時代のキリシタン弾圧下の司祭の苦悩を描いた遠藤周作の『沈黙』がひときわ印象深いという感想だった。

 一神教社会に生きる欧米人は論理的思考には自信があるという。だが『沈黙』を読むと、長崎奉行が、信仰は信仰として内心に保ちつつ、形式として「踏み絵をすればいいではないか」と話す際の、多神教社会の日本人ならではの説得の筋道に、打たれるものがあるらしい。

 今日、チュニジアにあるカルタゴの遺跡を訪れると、円形闘技場の廃虚を見ることができる。203年、そこで処刑された若い女性の死を考察したジョイス・E・ソールズベリ『ペルペトゥアの殉教 ローマ帝国に生きた若き女性の死とその記憶』(白水社、5200円)。最後の日々を日記に残したがために、信仰と女性・母親という思想の葛藤をたどれるまれな事例である。

残り489文字(全文880文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で過去8号分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

2月7日号

賃上げサバイバル16 大企業中心の賃上げブーム 中小の7割は「予定なし」 ■村田 晋一郎19 インタビュー 後藤茂之 経済再生担当大臣 賃上げは生産性向上と一体 非正規雇用の正社員化を支援20 「賃上げ」の真実 正社員中心主義脱却へ ■水町 勇一郎22 賃上げの処方箋 「物価・賃金は上がるもの」へ意 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事