教養・歴史書評

地球の裏側まで穴を掘れ 荒唐無稽な物語に興奮=美村里江

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 読書日記マイルール。執筆時から発刊3カ月以内の「新刊」を選ぶこと。面白い本が複数あり、迷ったら出版社をばらけさせること。A社の本を取り上げたら、しばらくはA社以外の本を選ぶようにすること。

 このルールを飛び越えてまで紹介したかったのが、前回(2月26日号)と同じ出版社の小説『いつか深い穴に落ちるまで』(山野辺太郎著、河出書房新社、1300円)。

 焼き鳥に串を通すように、日本から地球の裏側まで穴を掘り、交通を可能にする計画……。1人の男が思いついた荒唐無稽(むけい)なこのアイデアを、戦後まもない時期の高度経済成長の波が推し進めていく。ところがその後は惰性になり、「こんなおかしなことはやめるべきだ」というつぶやきを、誰もが心のどこかに潜めながら、それでも秘めたる計画は進んでいってしまう。

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