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国民医療費が増加する「意外な要因」=康永秀生

(出所)The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE 2000年5月11日号(Volume 342:1409~15ページ)より筆者作成
(出所)The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE 2000年5月11日号(Volume 342:1409~15ページ)より筆者作成

 国民医療費の増加により、医療保険制度の持続性を懸念する声が高まっている。今回はこの問題について論じる。

 これまで国民医療費増加の原因とされてきたものとして、(1)医療保険の普及、(2)経済成長、(3)医師誘発需要(後述)、(4)人口高齢化、(5)医療技術の進歩などが挙げられる。

 ハーバード大学のジョセフ・ニューハウス教授らの研究によれば、これらの要因が1960~2007年のアメリカの国民医療費上昇に果たした寄与度は、(1)医療保険の普及が10.8%、(2)経済成長が28.7~43.1%、(3)医師誘発需要はほぼゼロ、(4)人口高齢化が7.2%、 (5)医療技術の進歩が27.4~48.3%と推計された。

 日本の場合、「医療保険の普及」は国民医療費増加の要因には当たらない。なぜなら日本は61年に国民皆保険を確立しており、それ以降の医療費の上昇に「医療保険の普及」は関与していないからだ。

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