週刊エコノミスト Online書評

卸値60%! 波紋呼ぶ幻戯書房の決断=永江朗

 文芸書の出版で知られる幻戯書房が、取次(販売会社)や書店への卸値を本体価格の60%にすると宣言して、大きな話題となっている。

 一般的には、出版社から取次への卸値(出版業界では「正味」と呼ぶ)は本体価格の67~69%程度、取次から書店への卸値は同78%程度であることが多い。販売マージンは、取次が7~8%、書店が22%だ。この卸値を大幅に引き下げると出版社が宣言したのだから驚く。取次と書店の利益は増えるが、当然、幻戯書房の利益は減ることになる。

 なぜ自分の身を削るようなことをするのか? 書店・取次が疲弊していて、このままでは出版界が丸ごと崩壊しかねないからだ。社会のデジタル化にともなうライフスタイルの変化や人口減少などによって、出版市場は最盛期の半分以下になった。従来の薄利ではもはややっていけない。毎日、平均3店のペースで書店が閉店している。出版社にとっては商品の販売拠点が激減していくことを意味する。

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