教養・歴史書評

中国 異文化接触の現場 チベットの高原で=辻康吾

     昨年のベネチア国際映画祭で脚本賞を受賞した『轢(ひ)き殺された羊 撞死了一隻羊 Jinpa』。ペマ・ツェテン監督は、この映画の脚本家でもあり、同時に原作者の一人でもある。『ティメー・クンデンを探して』(勉誠出版、3000円)など日本でも翻訳がすでに紹介されており、文学者としても知られている。

     このたび、彼の映画の原作となる『撞死了一隻羊』(「一匹の羊を轢き殺した」、広東花城出版社)が手に入ったので、一読した。同書は他の2編と合わせた短編集だが、タイトルにもなっている「撞死了一隻羊」からは、茫漠(ぼうばく)たるチベット高原の風光の中でチベット人の魂の底に流れるラマ仏教の哲学が感得される。

     平凡なトラック運転手が一匹の羊をひき殺してしまう。死んだ羊は市場で売るか、食べてしまってもよいのだが、なぜか運転手は大枚をはたいて羊の遺体をチベット最高の鳥葬にし、祈りを捧げる。その後彼は、市場で羊肉を買って愛人のところに行く。運転手は無意識のまま現世での積善によって後世の福を願ったのだろう。

    残り497文字(全文942文字)

    週刊エコノミスト

    週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
    有料会員になると、続きをお読みいただけます。

    ・会員限定の有料記事が読み放題
    ・1989年からの誌面掲載記事検索
    ・デジタル紙面で過去8号分のバックナンバーが読める

    通常価格 月額2,040円(税込)

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    2月2日号

    ガソリン車ゼロ時代第1部 激変する自動車産業22 EVで出遅れる日本 市場奪取へ勝負の10年 ■市川 明代/白鳥 達哉26 図解・日本の雇用 製造から販売まで、2050年に80万人減も ■白鳥 達哉28 ガソリン車よりエコ! 生産から廃車まで、EVのCO2排出は少ない ■桜井 啓一郎31 インタビュ [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ情報

    最新の注目記事