「強い天皇」と「弱い天皇」=片山杜秀
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令和元年5月1日、「即位後朝見の儀の天皇陛下のおことば」が発せられた。短い中にさまざまな配慮があった。たとえば「上皇陛下がお示しになった象徴としてのお姿に心からの敬意と感謝を申し上げます」。このくだりは、前日の平成最後の日の「退位礼正殿の儀の天皇陛下のおことば」の次の箇所に対応している。「象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に、心から感謝します」。平成最後の名文句と言うべき「象徴としての私」を受けて「象徴としてのお姿」と返す。立派な答礼である。
その5月1日の新天皇の言葉には次の一節もあった。「上皇陛下には御即位より、30年以上」と述べて、「いかなる時も国民と苦楽を共にされながら、その強い御心(みこころ)を御自身のお姿でお示しになり」と続く。「御心」に「強い」と付けたところに子から父への批評がある。強烈におのれの意思を通した天皇であったということだろう。子はそのあとに自分も強くありたいとは言わない。ひとつのメッセージかとも思う。
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週刊エコノミスト
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