教養・歴史アートな時間

映画 存在のない子供たち=芝山幹郎

存在のない子どもたち (c)2018MoozFilms/(c)Fares Sokhon
存在のない子どもたち (c)2018MoozFilms/(c)Fares Sokhon

悲惨や絶望に耽溺せず貧困と混沌を直視する

「カオスにはつねに期待してよい」とかつて開高健は述べた。私もそう思っていた。外国の町を歩いていても、市場や路地に紛れ込むと胸が躍った。混沌(こんとん)の陰には未知が潜む。

 が、ある時期から、私は自分の解釈が浅薄だと気づいた。ロマンティックな眼でカオスを見るのは危うい。猫のような好奇心だけでカオスに近づくと、収拾のつかない事態に遭遇する。

 そんなこと……と思った方は「存在のない子供たち」(2018年)を見ていただきたい。レバノンのベイルートで6カ月をかけて撮影されたこの映画は、ドキュメンタリーではない。汚れてすさんだ町の背後に、太い物語と、濃い肉体と、入り組んだ情感がのたうっている。

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