『NETFLIX コンテンツ帝国の野望 GAFAを超える最強IT企業』 評者・楠木建
著者 ジーナ・キーティング(経済ジャーナリスト) 訳者 牧野洋 新潮社 1800円
今こそ読みたい ネット配信前夜の戦略
副題に「GAFAを超える最強IT企業」という、それらしい言葉が躍っているが、内容とは無関係なので注意されたい。とはいえ、そこに本書が傑作たるゆえんがあるので、ますます注意されたい。
現在のネットフリックスは確かに「最強IT企業」の一角を占めている。2018年時点で契約者は全世界で約1億4000万人。独自コンテンツの制作費でも他社を圧倒している。エンターテインメント業界の競争構造を一変させ、ウォルト・ディズニーを脅かす存在にまでなった。
その優位は資金力ではない。膨大な顧客の利用データに強みの正体がある。誰が、どこで、何時に、何時間、どういう映画を見ているのか。どのシーンを早送りし、どの俳優をひいきにしているのか。ビッグデータとアルゴリズムを駆使することによって契約者の選好と行動を驚くほどの精度で予測する。
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週刊エコノミスト
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