教養・歴史書評

日米安保と憲法第9条は「共存」しうるのか=井上寿一

 6月29日のG20大阪サミットの閉幕後の記者会見において、アメリカのトランプ大統領は、日米安全保障条約の廃棄の可能性について「全く考えていない」と否定する一方で、「不公平」なこの条約を「変えなければならない」と発言した。アメリカが日本を守るのならば、日本もアメリカを守るべきである。

 このように批判するトランプ大統領が日米安保条約の片務性の是正を求めていることは明らかだろう。他方で安倍首相は、年来の主張である憲法改正を進めようとしている。

 このような日米安保条約の対等化要求と憲法改正志向は、戦後から今日まで長く続く日本の政治体制を揺さぶることになる。戦後の日本は、相互に矛盾するはずの日米安保条約と憲法第9条を同時に受容してきた結果、平和と繁栄を享受することができた。ところがこれからはそうはいかない。日米安保条約と憲法第9条の矛盾の解消を考えなければならなくなったようである。

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