週刊エコノミスト Online書評

『人口8000万人時代に向けての日本経済』 評者・井堀利宏

著者 牛嶋正(経済学者) 風媒社 2000円

22世紀まで見据えた超長期的社会設計提案

 財政学の大家であるとともに、参議院議員(公明党比例区)として現実の政策立案に参加した実務家でもある著者が日本経済の長期的な将来像についての課題と提言をまとめた労作である。100年先の将来まで少子高齢化が進むと総人口が8000万人規模まで縮小する。その結果GDP(国内総生産)総額は減少するが、国民一人一人の生活水準の向上は可能であり、そのために、財政・社会保障だけでなく環境、地域再生も視野に入れた改革が必要だと説く。

 公的年金だけでは2000万円ほど不足するという金融庁の審議会報告書が政治問題化したが、少子高齢化社会で賦課方式の年金保険制度が十分に機能しないのは明らかだろう。著者は公的年金の守備範囲を70歳以上の高齢者に限定するとともに、税方式への移行を提案する。公的医療では保険制度を維持せざるを得ないが、ICカードや医療体制の効率化、民間保険の活用などで、医療費の抑制は可能だと主張する。

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