新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

週刊エコノミスト Online 書評

本当に「私」を生かすアイデンティティーを=ブレイディみかこ

×月×日

 うちの息子は、アイルランド人の父を持ち、日本人の母を持ち、英国で生まれ育っている。だからパスポートも三つ持っている。彼は白人であり、非白人でもあり、欧州人でもあり、アジア人だ。その実、自分はそのどれでもないという感覚もあり、自分のアイデンティティーは一つではないし、誰かに「お前はこれだ」と決められるのは変だと言う。

 そんな12歳の息子がいつも言っているようなことがそのまま書かれていて驚いたのが、アミン・マアルーフ著『アイデンティティが人を殺す』(ちくま学芸文庫、1100円)だ。1949年にレバノンで生まれた著者は、祖国の内乱をきっかけに76年にフランスに移住した。彼もまた、人の帰属先は一つではないし、誰からも一つの帰属先を選ばされる必要はなく、その帰属先のために「立ち上がれ」とか「戦え」と強制されることがあ…

残り990文字(全文1353文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事