週刊エコノミスト Online書評

『「追われる国」の経済学 ポスト・グローバリズムの処方箋』 評者・上川孝夫

     米中貿易摩擦の激化などで、世界経済の先行き懸念が強まり、先進国の金融政策は緩和競争の様相を呈してきた。しかし、長期的に見れば、先進国では低成長が一般化し、民間企業は資金余剰に転じている。書名にある「追われる国」とは、新興国に追われる先進国のことを指すが、いったい処方箋はあるのか。

     著者はかつて「バランスシート不況」という概念を提唱したことで知られる。バブル崩壊後の日本では、民間のバランスシートが毀損(きそん)し、債務の返済が最優先されたので、長期不況が続いた。しかし現在、追われる国では、この債務の最小化は、国内に魅力的な投資機会が存在せず、海外の資本収益率が高いという、もう一つの要因から生じている。

     本書は、この問題を「ルイスの転換点」という用語を使用して経済の発展段階から説明している。ルイスの転換点とは、工業化によって農村部の過剰労働力が都市部に吸収され尽くす時点である。先進国は、この「都市化の時代」から、ルイスの転換点を経て「黄金時代」に入り、さらに「他国に追われる時代」へと移る。この最後の段階では、国内の資本収益率は海外のそれを下回り、設備投資の増加や賃金・生産性の向上は期待できず、所…

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