週刊エコノミスト Online書評

練達の訳者しかできないモンテーニュの入門書=本村凌二

19世紀末に出たH・G・ウェルズ『タイム・マシン』は、過去にも未来にも時間を自由に行き来できるという夢を広げた。定めなき未来はともかく、歴史をさかのぼって時空を自由に往来できたらと望む者には、モンテーニュ『エセー』はおあつらえむきの古典である。

 この名著を“積ん読”だけで終わらせないように、宮下志朗『モンテーニュ 人生を旅するための7章』(岩波新書、840円)は古典の魅力を伝えるべく筆を進める。

 モンテーニュは「もっとも傑出した男たちについて」、詩聖ホメロス、アレクサンドロス大王とともに、古代ギリシアのテーバイの政治家エパメイノンダスを挙げている。彼は、レウクトラの戦い(前371年)でスパルタを破った将軍でもある。享受してもよい「豊かさ」を拒み、「極貧のうちにとどまり続けた」ことのうちに徳の姿を見ているらしい。

残り527文字(全文887文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事