週刊エコノミスト Onlineワイドインタビュー問答有用

「ツインスター」60年=田宮俊作・タミヤ会長兼社長/760

     子どものころ、タミヤのシンボルマーク“ツインスター”のプラモデルに熱中した読者も少なからずいるだろう。その“総帥”代表取締役会長兼社長の田宮俊作さんは齢(よわい)84にして意気軒高、その60年の業界人生とは。

    (聞き手=竹縄昌・ノンフィクションライター)

    田宮 あれは、川勝(平太)県知事のアイデアなんです。昨年、初めて知事がホビーショーを見学し、その時に「田宮さん、これは学生に見せなきゃダメですよ」って言われました。静岡市内の小・中学生に昨年取ったプラモデルのアンケートでは、「作ったことがない」という回答が7割を超えています。生徒の招待はとても好評のようで、小中高生の招待日は来年も続けようと思っています。

    田宮 今回あちこちでホビーショーの記事が出て、青森の新聞にも載ったと聞いています。そのようなこともあって子ども連れが多かったのではないでしょうか。

    田宮 飛行機が好きでしたね。子どものころは竹ひごで模型飛行機を作っていました。それにしても、模型を仕事にすることになるとは思わなかったですよ。前身の田宮自動車として運送会社を営んでいましたが、アメリカ製のフォード、シボレーのトラックやタクシーはほとんど徴用されて従業員は出征してしまいました。その後、おやじが知人と始めた軍需工場も空襲で焼け、戦後は素人商売で製材業を始めたのです。しかし、製材業を始めるために借金をしたのに、返済も終わらないうちの1951年、漏電で建物が全焼してしまいました。僕が県立静岡高校2年の時。本当に苦しい時でした。

    田宮 進学校だから、周りはみんな東京に行く。だから僕も行けるかと思っていたんですが、そんな金を送る余裕はない、と言っていたおやじさんとは別に、お袋さんはオートバイやスクーターを修理したり売ったりの商売をしていたからなんとか工面すると言ってくれました。おやじからは債権が貸し倒れのメーカーが東京にあるから、そこに行けば毎月借金を返してもらえるんじゃないかって。それで上京して、僕は18歳で借金取りまでやっていたんですよ。

    田宮 お袋が稼ぎの中からずっと下宿代を出してくれていましたが、それでも時々途切れるので、アルバイトはやってましたね。ところがそのお袋が卒業式の3日前に亡くなったんです。急性骨髄性白血病でした。病院の先生は過労と栄養失調で病気になったと話してくれました。7人の兄弟は頭が上がらなかったですね。卒業式の日が葬式で、一番下は小学生。弟たちの親代わりになって大学まで行かせなければと思いました。理屈じゃなくて、景気の悪い中で苦労している会社を一生懸命手伝って働かなきゃ、と思いましたね。

    田宮 火災で大きな機械が焼けてしまったので製材業ができなくなり、模型屋に転向したところでした。模型メーカーとしては後発で、(木製の)駆逐艦や巡洋艦などの製品を出しました。木製模型は切ったり削ったりするのに筋があると作りにくいため、ウチは北海道から良い木を持って来ていましたね。ところが、58年ごろ、アメリカやイギリスからプラモデルが入って来たんです。

    田宮 僕は木の模型が一気に衰退するとは思っていませんでしたが、模型の注文が来なくなってしまった。もう木の時代じゃなかったんです。戦艦大和の船体だけをプラ素材にして、木製模型だと面倒な木の目地を埋める作業を省くようにしたんだけれど、ニチモというメーカーの全部プラスチックを使った戦艦大和とバッティングして売れませんでした。うちも初のオールプラの戦艦大和を出しましたが、動く戦車模型に懸けたんです。それが…

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