高止まりする新築価格 流通豊富な中古が主役に=市川明代
<新築vs中古>
ホテル・オフィスの旺盛な建設需要による建築資材の高騰・地価上昇を背景に、首都圏の新築マンションの分譲価格は高止まりを続けている。そうしたなか、活況を帯びているのが中古マンション市場だ。東日本不動産流通機構などの調査によると、中古の成約件数は2016年から3年連続で新築の供給量を上回った(図1)。
新築成約スピード鈍化
首都圏の新築マンションの供給戸数は、13年をピークに減少傾向にある。ホテルの建設ニーズが高まり、用地取得が難しくなっているのが大きな要因だ。東京23区では平均分譲価格が17年から7000万円を超える異常事態になっている。東京カンテイの高橋雅之主任研究員は「平均的な年収600万円世帯なら4000万円台が限界。親の援助がなければ新築は買えない」と話す。「富裕層がマーケットを支えており、株価が2万円を割れば状況は変わってくるかもしれないが、当面はこの状態が続くだろう」と分析する。
消費者の傾向にも変化が見られる。不動産経済研究所の調べでは、分譲を開始した月に契約が成立した割合を示す初月契約率は、18年の平均で62・1%。13年以降、下落し続けている。松田忠司主任研究員は「価格が上がっている分、じっくり品定めするようになっているのでは」と分析する。
新築の供給戸数が伸び悩む中、唯一衰え知らずなのはタワーマンションだ。タワマンは容積率などの規制緩和によって1990年代から駅前再開発エリアを中心に急増。供給数はリーマン・ショック後にやや縮小したが、その後も湾岸エリアを中心に増え続けている。同研究所によると、首都圏で08~18年に建設されたタワマンは361棟、11万8102戸。全供給量のおよそ4戸に1戸がタワマンという計算になる。19年以降は判明分だけで183棟、8万4012戸の建設が計画されているという(図2)。
築30年超に需要じわり
中古マンションの成約価格も新築価格と連動してじわじわ上昇している。首都圏の中古の成約状況の築年帯別割合をみると、築31年以上が徐々に増えている(図3)。割高感から、供給量が多く、安価な古い物件に流れているとみられる。
ただし、中古の売れ行きも二極化している。東京カンテイの高橋研究員は「立地選びはよりシビアになっている。職場からより近い場所、30~40分以内のエリアにニーズが集中している」と話す。
(市川明代・編集部)