週刊エコノミスト Online書評

『地方証券史 オーラルヒストリーで学ぶ地方証券のビジネスモデル』 評者・平山賢一

     全国12地域の地方証券会社経営者らへの地道なインタビューをまとめた出色の書。読者は本書から、戦後、我が国の証券業界を支えた人々の息遣いを感じることができるだろう。

     類書にはない点は、あまりにも正直で率直な述懐が積み重ねられている点だ。ここまで包み隠さずに語ってよいものなのかと心配になるほどでさえある。特に、今村証券の今村九治氏、丸近証券の勝見昭氏によるオーラルヒストリー(口述の歴史)は注目に値する。大手金融機関・証券会社を中心とした証券史からは、うかがうことの知れない汗と努力の歴史、そして先見性が浮かび上がってくるからだ。繰り返される合併、統合、廃業の地方証券史の中で、生き残ってきた人々の歩みからは、使命感と共に「株式ブローカー」というステレオタイプのビジネスモデルを断ち切る多様性への英断を垣間見ることができるのである。

     金融というお堅いイメージのあるビジネスとはいえ、すべてが単一のビジネスモデルで語れるものではないはずだ。顧客の数だけ、金融ビジネスのあり方も多様であり、顧客のニーズに応じたサービスを提供する使命があり、「かくあるべき」という定型思考からの解放が求められよう。このような地方証券会社のビジネスモデル多様化へのきっかけが、「人と人とのつながり」であった点は、興味深い。

    残り663文字(全文1212文字)

    週刊エコノミスト

    週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
    有料会員になると、続きをお読みいただけます。

    ・会員限定の有料記事が読み放題
    ・1989年からの誌面掲載記事検索
    ・デジタル紙面で過去8号分のバックナンバーが読める

    通常価格 月額2,040円(税込)

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    7月21日号

    もう働かなくても大丈夫? ベーシックインカム入門18 Q1 なぜ今、BIの議論が? コロナ禍で覆った「常識」 誰もが困窮する時代に転換 ■市川 明代21 政党に聞く 定額給付金とBI 斉藤鉄夫 公明党幹事長 「国民の理解が『一変』 BI検討が必要な時代」 玉木雄一郎 国民民主党代表 「所得制限は社会 [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ情報

    最新の注目記事

    ザ・マーケット