週刊エコノミスト Online書評

『AI時代の労働の哲学』 評者・加護野忠男

     人間の知的な判断に依存してきた諸分野でAIの導入が進められている。判断の自動化が進められているのである。このようなAIが知的な労働の分野で人間の存在意義を奪ってしまうのではないかという不安を抱く。囲碁や将棋の分野でAIが人間の達人に勝ったという報道を見ると、不安はますます強くなる。

     本書は、AIの導入によって労働がどのように変わるかを大きく深く考えようとした著作である。現代の労働についての問題は、資本主義とのかかわりで議論されることが多かった。本書ではまず、資本主義における労働についての議論を振り返り、つぎにAIが資本主義にどのような変質をもたらすかを論じ、それをもとにAI化がもたらす労働の変容を考えようとしたものである。本書は資本主義における労働の本質についての古典的な議論の復習という性質も持っている。

     コンピューターの台頭とともに情報処理能力が向上し、社会主義の計画経済における精度の向上をもたらし、合理的計画を可能にするという社会主義への楽観論がかつて台頭したことがある。しかしコンピューターは社会主義の助けにはならなかった。

    残り672文字(全文1144文字)

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