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週刊エコノミスト Online 書評

綱吉の「生類憐みの令」「動物愛護」説に痛棒=今谷明

 将軍徳川綱吉の「生類憐(あわれ)みの令」といえば、誰でも知っている。江戸西郊の中野や大久保、四谷に広大な犬小屋を建てて収容し、犬への殺傷についてはとくに厳しく罰した。綱吉死後、右法令はすぐ廃され、希代の悪法としての見方が定着していたが、広辞苑などの記述で動物愛護の趣旨を強調するように変化してきたことなどを見ても、その歴史的な評価は微妙に揺れ動いている。

 評者が駆け出しの研究者であった40年前、職場の同僚であった塚本学氏(近世史の大家)が生類憐みの令の再評価を試みたのが学界への問題提起のさきがけとなったと記憶している。また評者が長く教授を務めていた横浜市立大学のごく近所に「米倉陣屋」と称する遺跡があった。大久保の犬小屋を世話した功で大名に取り立てられた米倉氏の邸跡である。世に大名多しといえども、犬の世話で大名に上ったのは米倉氏ぐらいだろうと、大学…

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