教養・歴史書評

『記者と国家 西山太吉の遺言』 評者・新藤宗幸

     国家間の交渉過程には機密が付きまとう。ただし、それに果敢に接近し交渉事の内実を引き出すことは、野党やメディアの役割だ。外交機密文書を一定の時間経過後に公開することは、歴史への責任である。これらは民主政治の成熟度合いを物語る。

     本書の著者・西山太吉は、毎日新聞政治部記者として佐藤栄作首相の沖縄返還交渉にまつわる「闇」を果敢に追及していた。沖縄返還交渉における原状回復補償費に絡む密約をつかみながらも、1972年4月、機密漏えい教唆で国家公務員法違反として逮捕される。それから47年の時間が経過するが、日本政府は事件の核心である沖縄密約に関する機密文書の存在を公的に認めていない。

     本書は、改めて沖縄返還に伴う機密問題を論じただけではない。今日の辺野古新基地の建設につながっていると指摘するとともに、報道のあり方を厳しく問うものである。

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