教養・歴史書評

『隠された奴隷制』 評者・浜矩子

著者 植村邦彦(関西大学教授) 集英社新書 880円

資本主義的生産体制こそベールをかぶった奴隷制度

 恐ろしい本である。その恐ろしさの本質が次のくだりに凝縮されている。「自分自身が『奴隷』であることに気づいていない『奴隷』。主観的には自分は『最大の自由』と『個人の完全な独立性』を享受していると思っている『奴隷』。」

 この自覚症状なき奴隷たちは、資本主義の展開過程の中で産み落とされた。工場労働者としての彼らの誕生プロセスとその生態を、歴代の啓蒙(けいもう)思想家たち、そしてカール・マルクスが論じている。論者たちの分析と主張を徹底追跡しているのが、本書だ。その意味で、本書は思想史本である。

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