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公的年金の財政健全化に向き合え=西沢和彦
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2019年8月に公表された公的年金の財政検証を受け、政府内で制度の見直しが議論されている。もっとも、それは沈みかけた船の上で行き先を議論しているように映る。年金財政の健全化という根本的な課題から目を背け、優先順位の低い制度改正の議論に終始しているためだ。
財政検証では、将来の物価・賃金上昇率別にケース(1)〜(6)の6通りの経済前提が置かれ、将来の年金財政の姿が描かれている。もっとも、六つのうちケース(1)〜(5)は実態と乖離(かいり)している。(1)〜(5)では、名目賃金上昇率(賃金+物価上昇率)1・6〜3・6%が想定されており(図1)、これであれば、放っておいても年金財政の健全化は進む。なぜなら、04年の年金改正で導入されたマクロ経済スライドが順調に機能するからだ。
年金額は、名目賃金上昇率と同率で毎年改定されるのが原則である。マクロ経済スライドでは、この原則が棚上げされ、名目賃金上昇率から1〜2%ポイント程度(年によって異なる)を差し引いた率での年金額改定にとどめられる。それによって、年金財政の健全化が目指された。
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