週刊エコノミスト Online書評

『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本』 評者・後藤康雄

著者 稲田俊輔(円相フードサービス専務取締役) 扶桑社新書 880円

消費者ニーズに確実に応える 大資本の努力を正当評価

 異色のグルメガイドであり、鮮やかな市場分析リポートでもある。本書は、飲食チェーン店のヘビーユーザーであり、自らも飲食店を経営する著者が、飲食チェーンを縦横無尽に語った新書である。

 手に取る前、評者は、低価格を実現するノウハウ集を想像していた。そうした要素も皆無ではないが、重きは置かれない。低価格と並ぶウリであるファミリー層の気安さにも触れる程度である。本書がスポットを当てるのは、これら誰の目にも明らかな側面ではなく、飲食の中核をなす「味」であり「食の楽しさ」だ。そこでの筆者の関心は、低コストでの子どもへの媚(こ)びではなく、大人も満足させるさりげなく仕込まれた本格派の要素である。

 作り手としてチェーン店がこだわっているポイントはどこか。それはとりもなおさず、客として何をオーダーすれば「お得」かを意味する。1人2000円の本格イタリアンコースや、大手チェーンのこだわりハンバーガーとフルボトルワインの組み合わせなど、筆者の提案は大胆かつ自由であり、地に足がついた大人のものである。

残り667文字(全文1171文字)

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